トップアイドルは白衣の天使に恋をする

お店を出ると、夜の空気がひんやりと肌に触れる。

さっきまでの賑やかさとのギャップに、思わず肩をすくめた。

さむっ…

小さく呟いた、その瞬間。

「ほら」

ふわっと、肩に何かがかけられる。

陽貴くんの上着。

「え、でも……」

戸惑っていると。

「いいから」

さらっと言われる。

その距離の近さと、ほんのり残る香りに、胸が少しだけざわつく。

「……ありがと」

小さくそう言った――その時。

「おいおいおいおい〜〜〜!」

後ろから、やたら大きな声。

びくっとして振り返ると。

ニヤニヤした顔の奏くんと蒼依くん。

「なにその彼氏ムーブ!!」

奏くんが大げさに指をさす。

「いやいやいや、さすがトップアイドルっすね〜」

蒼依くんも肩をすくめながら笑う。

「寒い?じゃあ俺の上着どうぞ、って??」

奏くんがわざとらしく再現する。

完全に酔ってる2人。

「うるせぇよ」

陽貴くんが即座に返す。

「いやでもさ、タイミング完璧すぎない?」

蒼依くんがニヤつく。

「完全に狙ってたでしょ今」

「狙ってねぇ」

短く否定。

「嘘つけ〜!」

「絶対練習してるって!」

「普段から鏡の前で“ほら”とかやってるやつ!」

「やってねぇわ!」

テンポよく飛び交うツッコミ。

思わず吹き出してしまう。

「もうやめてよ…っ」

恥ずかしくて、思わず顔を覆う。

「ほら紗凪ちゃんも照れてるじゃん!」

奏くんがさらに煽る。

「いいねいいね〜青春だね〜」

蒼依くんまで乗っかる。

「お前らほんと黙れ」

陽貴くんが少し低い声で言う。

でも、その横顔はどこか緩んでいて。

完全に本気で怒ってるわけじゃないのが分かる。

「まぁでも」

優朔さんがふっと笑う。

「そういうの、大事だと思うよ」

さらっと言われて。

一瞬、空気が止まる。

「え、優朔さんまで!?」

奏くんが驚く。

「意外と肯定派なんだな」

蒼依くんもくすっと笑う。

その空気に、また少し笑いが広がる。