トップアイドルは白衣の天使に恋をする

会議室のドアを開ける。

外に出た瞬間――

そこには、みんながいた。

少し離れたところで、壁にもたれたり、腕を組んだりしながら。

でも、その視線は一斉にこちらに向く。

「……っ」

胸が、じんわりと熱くなる。

こんなふうに、待ってくれていたんだ。

「おまたせしました」

少しだけ声を整えて、そう言う。

そして――

「みなさん、本当にありがとうございました」

深く、頭を下げた。

感謝の気持ちが、溢れて止まらなかった。

すると。

「紗凪ちゃん、よかったね」

優朔さんの優しい声。

顔を上げると、柔らかく微笑んでくれている。

その表情に、胸がぎゅっとなる。

「これでまた撮影も一緒っすね」

奏くんが嬉しそうに言う。

いつもより少し明るい声。

「俺たちの紗凪ちゃんが戻ってきた〜」

蒼依くんが大げさに両手を広げる。

その言い方が少しおどけていて。

思わず、くすっと笑ってしまう。

「……ほんとに、ありがとう」

改めてそう言うと。

横から、ふっと声がかかる。

「林がだいぶ頑張ってくれたんだ」

陽貴くん。

その言葉に、はっとして視線を向ける。

少し後ろにいた林くん。

目が合うと――

ぱっと、視線を逸らした。

耳まで赤くなっている。

その姿が、なんだか可愛くて。

思わず、少し近づく。

「林くん」

名前を呼ぶと、びくっと肩が揺れる。

「……はいっ」

少し裏返った声。

「本当にありがとう」

まっすぐに言う。

「林くんが動いてくれなかったら、私……」

言葉が少し詰まる。

でも、ちゃんと伝えたくて。

「ここにいられなかったかもしれない」

そのまま、にこっと笑う。

「本当にありがとうね」

その瞬間。

林くんの顔が、一気に赤くなる。

「俺、一ノ瀬さんのこと、ほんと尊敬してますし……」

小さく、でもしっかりとした声。

その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。

その時。

「紗凪の今までの行いが、周りを動かしたんだ」

隣から、陽貴くんの声。

静かで、でもはっきりとした言葉。

その一言が。

胸の奥に、深く響く。

……私のこれまでの全部。

頑張ってきたこと。

積み重ねてきたこと。

それが、ちゃんと誰かに伝わっていた。

それが――今、こうして返ってきている。

「……っ」

また、涙が出そうになる。

でも、今度は――

ぐっとこらえて、笑う。

「……ありがとう」

小さく、でもしっかりと。

その場にいるみんなに向けて。

――

「じゃあ、あとは病院と監督たちに任せようか」

優朔さんが、少しだけ肩の力を抜いたように言う。

その言葉に、みんなが頷く。

「俺らは俺らの仕事しないとっすね」

奏くんが軽く言う。

「撮影現場戻るか〜」

蒼依くんもいつもの調子。

そのやり取りが、なんだかすごく日常で。

さっきまでの出来事が嘘みたいに感じる。

でも――

確かに現実で。

ちゃんと乗り越えた。

「行こう」

陽貴くんが、隣で小さく言う。

その声に、頷く。

「うん」

一歩、踏み出す。

みんなと一緒に。

撮影現場へ向かう。

その足取りは――

もう、重くなかった。