トップアイドルは白衣の天使に恋をする

震える指。

力が入っているのが、自分でも分かる。

「……紗凪」

優しく名前を呼ばれる。

その声だけで、涙がまた溢れそうになる。

「……怖かった」

ぽつりと、こぼれる。

止めようと思ったのに、止まらなかった。

「陽貴くんが…他の子にいっちゃうかと…」

「それは絶対ない。俺には紗凪しかいない」

言葉を遮られる。

声が震える。

「匂いも……思い出して……」

「ほんとに…怖かった…」

途中で言葉が崩れる。

うまく話せない。

でも。

ちゃんと伝えたかった。

その全部を、聞き終えて。

ただ、静かに聞いてくれて。

そして。

そっと、抱き寄せられる。

「……ごめん」

低くて、落ち着いた声。

「俺のやり方が強引すぎた」

胸に顔が当たる。

規則正しい鼓動が、伝わってくる。

「でも」

少しだけ、腕の力が強くなる。

「お前を守るためなら、なんでもする」

その言葉は、まっすぐで。

迷いがなくて。

「……っ」

胸が、ぎゅっとなる。

嬉しいのに。

少しだけ、怖い。


「一人で行かないでほしかった……」

正直な気持ち。

「もし、何かあったらって……思った」

腕の中で、少しだけ力が抜けるのが分かる。

沈黙。

ほんの数秒。

でも、ちゃんと考えてくれているのが分かる。

「……そうだな」

ぽつりと。

「それは、俺が悪い」

素直に認める声。

「次はちゃんと、お前にも話す」

その言葉に、少しだけ顔を上げる。

「約束する」

まっすぐな目。

逃げていない。

誤魔化していない。


それだけで。

十分だった。

「……うん」

小さく頷く。

すると。ふっと、陽貴くんの表情が少し柔らかくなる。

「やっと、いつもの顔」

そう言って、少しだけ笑う。

「え……?」

「さっきまで、今にも倒れそうだった」

心から、心配したと言う顔。

「とりあえず…一件落着だな」

ふぅと息を吐き背伸びをする陽貴くん。

まだちゃんとした結果は出てないけど…

それでも心を軽くするには十分すぎた。