「少しだけ、二人にしてもらえないか」
陽貴くんはまっすぐと私の方を見る。
「……いいよ」
優朔さんは何かを感じ取ったように、そう言った。
「じゃ、外で待ってる」
蒼依くんも「了解っす」と軽く手を上げる。
林くんは何度もこちらを見ながら、名残惜しそうに出ていった。
そして――ドアが閉まる音。
会議室に、静寂が戻る。
――
二人きり。
その瞬間、空気が変わる。
さっきまでの緊張とは違う、少しだけ柔らかい沈黙。
でも私は、まだ完全には落ち着いていなかった。
さっきの胡桃の言葉が、頭の中で何度も反響する。
「抱きしめられてっ……」
「胡桃の家に来てくれてねぇ」
胸の奥が、ざわつく。
視線を合わせられないまま、手元を見つめてしまう。
「……紗凪」
名前を呼ばれて顔を上げる。
陽貴くんは、とても優しい顔をしていた。
「まずは……」
一歩、近づく。
「本当に、お疲れさま」
その言葉に、胸がじんと熱くなる。
「怖かったよな」
静かな声。
その一言で、張り詰めていたものが少し揺れる。
「……うん」
小さく頷くのが精一杯だった。
すると、陽貴くんの視線が、少しだけ私の表情に止まる。
「……どうした?」
……気づかれた
心臓が跳ねる。
少しだけ迷ったあと、唇を噛む。
「……あの」
声が小さい。
「胡桃さんのこと……」
一瞬、陽貴くんの目が変わる。
でも否定はしない。
ただ、ちゃんと聞こうとしている顔。
「さっき、あの人が言ってたこと……」
言葉が途切れる。
喉が詰まる感じがする。
それでも、続ける。
「……陽貴くん、本当に……」
「胡桃さんの家に、行ったの?」
その瞬間。
空気が止まる。
陽貴くんは一度、目を伏せる。
そして、小さく息を吐いた。
「……行ったよ」
その言葉に胸がぎゅっと締め付けられる。
……やっぱり行ったんだ。
視界が少し揺れる。
でも次の瞬間。
「でも」
「お前が思ってるようなことは、何もない」
静かで、でも揺るぎない声。
「俺は、証拠を取りに行っただけだから」
――証拠?
頭が一瞬止まる。
「胡桃の家で見つけたのは」
「お前の件に関わる医療物品と、ヘリで見つかったピアス」
その言葉で、少しずつ繋がっていく。
……あれって
「最初から、違和感はあった」
陽貴くんは続ける。
「でも確証がなかった」
「だから、直接行った」
その声には、迷いがない。
「お前を守るために」
その一言で。
胸の中の何かが、音を立てて崩れる。
「……じゃあ」
声が震える。
「抱きしめられたって……」
「全部、あの人が勝手に……?」
陽貴くんは、少しだけ眉をひそめる。
「そういうこと」
短く、はっきりと。
その瞬間。
涙が、ぽろっと落ちた。
ずっと、苦しかった。
ずっと、信じたいのに信じられなくて。
一人でぐるぐるして。
でも――
「ごめん」
陽貴くんが、少しだけ声を落とす。
「不安にさせた」
その言葉に、首を振る。
「……違う」
「私が勝手に……」
言いかけたところで。
そっと、手が伸びてくる。
軽く、でも確かに。
頭に触れるように。
「紗凪」
優しい声。
「ちゃんと、見てる」
「ちゃんと、信じてる」
その言葉で。
もう、我慢できなかった。
気づいたら。
私は陽貴くんの服を、ぎゅっと掴んでいた。
陽貴くんはまっすぐと私の方を見る。
「……いいよ」
優朔さんは何かを感じ取ったように、そう言った。
「じゃ、外で待ってる」
蒼依くんも「了解っす」と軽く手を上げる。
林くんは何度もこちらを見ながら、名残惜しそうに出ていった。
そして――ドアが閉まる音。
会議室に、静寂が戻る。
――
二人きり。
その瞬間、空気が変わる。
さっきまでの緊張とは違う、少しだけ柔らかい沈黙。
でも私は、まだ完全には落ち着いていなかった。
さっきの胡桃の言葉が、頭の中で何度も反響する。
「抱きしめられてっ……」
「胡桃の家に来てくれてねぇ」
胸の奥が、ざわつく。
視線を合わせられないまま、手元を見つめてしまう。
「……紗凪」
名前を呼ばれて顔を上げる。
陽貴くんは、とても優しい顔をしていた。
「まずは……」
一歩、近づく。
「本当に、お疲れさま」
その言葉に、胸がじんと熱くなる。
「怖かったよな」
静かな声。
その一言で、張り詰めていたものが少し揺れる。
「……うん」
小さく頷くのが精一杯だった。
すると、陽貴くんの視線が、少しだけ私の表情に止まる。
「……どうした?」
……気づかれた
心臓が跳ねる。
少しだけ迷ったあと、唇を噛む。
「……あの」
声が小さい。
「胡桃さんのこと……」
一瞬、陽貴くんの目が変わる。
でも否定はしない。
ただ、ちゃんと聞こうとしている顔。
「さっき、あの人が言ってたこと……」
言葉が途切れる。
喉が詰まる感じがする。
それでも、続ける。
「……陽貴くん、本当に……」
「胡桃さんの家に、行ったの?」
その瞬間。
空気が止まる。
陽貴くんは一度、目を伏せる。
そして、小さく息を吐いた。
「……行ったよ」
その言葉に胸がぎゅっと締め付けられる。
……やっぱり行ったんだ。
視界が少し揺れる。
でも次の瞬間。
「でも」
「お前が思ってるようなことは、何もない」
静かで、でも揺るぎない声。
「俺は、証拠を取りに行っただけだから」
――証拠?
頭が一瞬止まる。
「胡桃の家で見つけたのは」
「お前の件に関わる医療物品と、ヘリで見つかったピアス」
その言葉で、少しずつ繋がっていく。
……あれって
「最初から、違和感はあった」
陽貴くんは続ける。
「でも確証がなかった」
「だから、直接行った」
その声には、迷いがない。
「お前を守るために」
その一言で。
胸の中の何かが、音を立てて崩れる。
「……じゃあ」
声が震える。
「抱きしめられたって……」
「全部、あの人が勝手に……?」
陽貴くんは、少しだけ眉をひそめる。
「そういうこと」
短く、はっきりと。
その瞬間。
涙が、ぽろっと落ちた。
ずっと、苦しかった。
ずっと、信じたいのに信じられなくて。
一人でぐるぐるして。
でも――
「ごめん」
陽貴くんが、少しだけ声を落とす。
「不安にさせた」
その言葉に、首を振る。
「……違う」
「私が勝手に……」
言いかけたところで。
そっと、手が伸びてくる。
軽く、でも確かに。
頭に触れるように。
「紗凪」
優しい声。
「ちゃんと、見てる」
「ちゃんと、信じてる」
その言葉で。
もう、我慢できなかった。
気づいたら。
私は陽貴くんの服を、ぎゅっと掴んでいた。
