「では、始めます」
その一言で、空気がさらに張り詰める。
背筋を伸ばしたまま、視線を落とさないように必死に前を向く。
「一ノ瀬紗凪さん」
名前を呼ばれる。
「はい」
声が、少しだけ震える。
看護部長が資料に目を落としながら続ける。
「今回のフライト中の事案について、事実確認と今後の資格継続について検討します」
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「まず、当日の状況を説明してください」
その言葉に、一瞬言葉が詰まる。
でも――
逃げない。
ゆっくりと息を吸う。
「……はい」
自分の声が、自分じゃないみたいに遠く聞こえる。
それでも、一つ一つ思い出しながら話し始める。
「あの日、私はいつもと同じように始動前にチェックリストに沿って物品チェックを行いました。その時は不足物品はありませんでした。そして搬送中、患者さんの状態が急変し……フライトドクターがアドレナリン投与が必要と判断しました」
あの時の光景が、頭に浮かぶ。
モニターのアラーム。
焦り。
手の震え。
「ですが、準備されているはずの薬剤が見当たらず……」
一瞬、言葉が詰まる。
……怖い
でも、続ける。
「迅速な対応が遅れてしまいました」
部屋が静かになる。
「……以上です」
言い終えて、膝の上の手をぎゅっと握る。
沈黙。
誰もすぐには口を開かない。
その時間が、やけに長く感じる。
やっぱりもう、だめかもしれない。
そんな考えが、頭をよぎる。
その時――
「一ノ瀬さん」
別の声。
顔を上げると、医局の医師がこちらを見ている。
「あなたは、薬剤がなかったことに気づいた時、どう行動しましたか?」
「……はい」
なんとか声を出す。
「機内を再確認し、他スタッフにも確認を依頼しました」
「その際、薬剤が本来配置されている位置に異常は?」
「……いえ」
少しだけ、戸惑う。
「通常であれば、必ずある場所です」
また、ざわりと空気が動く。
何かが――少しずつ変わり始めている気がする。
その一言で、空気がさらに張り詰める。
背筋を伸ばしたまま、視線を落とさないように必死に前を向く。
「一ノ瀬紗凪さん」
名前を呼ばれる。
「はい」
声が、少しだけ震える。
看護部長が資料に目を落としながら続ける。
「今回のフライト中の事案について、事実確認と今後の資格継続について検討します」
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「まず、当日の状況を説明してください」
その言葉に、一瞬言葉が詰まる。
でも――
逃げない。
ゆっくりと息を吸う。
「……はい」
自分の声が、自分じゃないみたいに遠く聞こえる。
それでも、一つ一つ思い出しながら話し始める。
「あの日、私はいつもと同じように始動前にチェックリストに沿って物品チェックを行いました。その時は不足物品はありませんでした。そして搬送中、患者さんの状態が急変し……フライトドクターがアドレナリン投与が必要と判断しました」
あの時の光景が、頭に浮かぶ。
モニターのアラーム。
焦り。
手の震え。
「ですが、準備されているはずの薬剤が見当たらず……」
一瞬、言葉が詰まる。
……怖い
でも、続ける。
「迅速な対応が遅れてしまいました」
部屋が静かになる。
「……以上です」
言い終えて、膝の上の手をぎゅっと握る。
沈黙。
誰もすぐには口を開かない。
その時間が、やけに長く感じる。
やっぱりもう、だめかもしれない。
そんな考えが、頭をよぎる。
その時――
「一ノ瀬さん」
別の声。
顔を上げると、医局の医師がこちらを見ている。
「あなたは、薬剤がなかったことに気づいた時、どう行動しましたか?」
「……はい」
なんとか声を出す。
「機内を再確認し、他スタッフにも確認を依頼しました」
「その際、薬剤が本来配置されている位置に異常は?」
「……いえ」
少しだけ、戸惑う。
「通常であれば、必ずある場所です」
また、ざわりと空気が動く。
何かが――少しずつ変わり始めている気がする。
