更衣室へ向かう廊下。
その途中で。
「あれぇ?もしかして一ノ瀬さぁん?」
聞きたくない声。
甘ったるくて、耳に残る声。
足が止まる。
振り返ると――
そこにいたのは、やっぱり。
花宮胡桃。
一気に気分が沈む。
正直、顔も見たくない。
関わりたくない。
でも。
そんな私の気持ちなんてお構いなしにずかずかと距離を詰めてくる。
「なんかぁ、患者さん殺しかけたんでしょ?」
にやっと笑う。
「クビになったって聞いたけど?」
花宮胡桃の言葉がぐさっと、胸に刺さる。
今の私には――あまりにも重い。
息が詰まる。
心をえぐられるような感覚。
でも何も言い返せない。
言葉が出てこない。
ただ、視線を逸らして。
そのまま前を向いて歩き出す。
関わりたくない。
それ以上でも、それ以下でもない。
「あっ、そうだぁ」
背後から、また声。
「陽貴くんがね」
――その名前に。
足が止まる。
止めたくなかったのに。
反射みたいに、止まってしまう。
「この間、胡桃の家に来てくれてねぇ」
……え?
「えへぇっ……抱きしめられてっ……」
照れたように、わざとらしく笑う。
その言葉が、ゆっくり頭に入ってくる。
頭が真っ白になる。
……やめて
聞きたくない。
お願いだから。
もうやめて。
心が、一気に揺れる。
ドクン、と大きく脈打つ。
あの時のことが、蘇る。
陽貴くんが帰ってきた夜。
抱きしめられた時に感じた――あの香り。
きつい香水の香り。
…そういうこと、だったの?
頭が、追いつかない。
理解したくないのに。
勝手に繋がってしまう。
ねぇ。
陽貴くん。
あの日――
本当に、彼女の家に行ったの?
彼女を、抱きしめたの?
どうして?
どうして?
どうして――?
疑問が、ぐるぐると回る。
視界が滲む。
今にも、涙が溢れそうになる。
……だめ
ここで泣いたら、負ける。
そう思って。
ぐっと歯を食いしばる。
胡桃はまだ何か話している。
でも――もう、聞こえない。
聞きたくない。
そのまま。
足早に、更衣室へ向かった。
逃げるように。
何かから、振り切るように。
その途中で。
「あれぇ?もしかして一ノ瀬さぁん?」
聞きたくない声。
甘ったるくて、耳に残る声。
足が止まる。
振り返ると――
そこにいたのは、やっぱり。
花宮胡桃。
一気に気分が沈む。
正直、顔も見たくない。
関わりたくない。
でも。
そんな私の気持ちなんてお構いなしにずかずかと距離を詰めてくる。
「なんかぁ、患者さん殺しかけたんでしょ?」
にやっと笑う。
「クビになったって聞いたけど?」
花宮胡桃の言葉がぐさっと、胸に刺さる。
今の私には――あまりにも重い。
息が詰まる。
心をえぐられるような感覚。
でも何も言い返せない。
言葉が出てこない。
ただ、視線を逸らして。
そのまま前を向いて歩き出す。
関わりたくない。
それ以上でも、それ以下でもない。
「あっ、そうだぁ」
背後から、また声。
「陽貴くんがね」
――その名前に。
足が止まる。
止めたくなかったのに。
反射みたいに、止まってしまう。
「この間、胡桃の家に来てくれてねぇ」
……え?
「えへぇっ……抱きしめられてっ……」
照れたように、わざとらしく笑う。
その言葉が、ゆっくり頭に入ってくる。
頭が真っ白になる。
……やめて
聞きたくない。
お願いだから。
もうやめて。
心が、一気に揺れる。
ドクン、と大きく脈打つ。
あの時のことが、蘇る。
陽貴くんが帰ってきた夜。
抱きしめられた時に感じた――あの香り。
きつい香水の香り。
…そういうこと、だったの?
頭が、追いつかない。
理解したくないのに。
勝手に繋がってしまう。
ねぇ。
陽貴くん。
あの日――
本当に、彼女の家に行ったの?
彼女を、抱きしめたの?
どうして?
どうして?
どうして――?
疑問が、ぐるぐると回る。
視界が滲む。
今にも、涙が溢れそうになる。
……だめ
ここで泣いたら、負ける。
そう思って。
ぐっと歯を食いしばる。
胡桃はまだ何か話している。
でも――もう、聞こえない。
聞きたくない。
そのまま。
足早に、更衣室へ向かった。
逃げるように。
何かから、振り切るように。
