トップアイドルは白衣の天使に恋をする

撮影が終わって、家に帰る。

いつもより少し遅い時間。

鍵を回して、ドアを開ける。

――暗い。

灯りのない部屋。

あの、ふわっとした温かい香りもない。

一瞬で、分かる。

……あぁ

「帰ったんだな」

ぽつりと、心の中で呟く。

分かっていたはずなのに。

ほんの少しだけ、胸の奥が空く。

「ただいま」

いつも通りに言ってみる。

でも――

返事はない。

当たり前なのに、少しだけ寂しい。

電気をつける。

ぱっと明るくなる部屋。

その中で、すぐに目に入るのは――

テーブルの上の、置き手紙。

ゆっくり近づいて、手に取る。

見慣れた字。

優しくて、丁寧な文字。

ふっと、力が抜ける。

そのまま冷蔵庫を開ける。

中には――

きれいにラップされた料理。

鯛の煮付け。

ほうれん草のおひたし。

味噌汁。

どれも、ちゃんと整ってる。

まるで「ちゃんと食べてね」って言われてるみたいで。

思わず、小さく笑う。

部屋を見渡す。きれいに整えられた空間。

洗濯も、きちんと片付いている。

クッションの位置まで整っていて。

ほんとに、最後まで抜かりがない。

「全く……紗凪らしいな」

小さく呟く。