トップアイドルは白衣の天使に恋をする

病院に着いた瞬間

空気が少し違う

「……陽貴」

低く、抑えた声

振り向くと――優朔

明らかに機嫌が悪い

目が、笑ってない

あー、これは怒ってるな

一瞬で察する

「分かってるよ」

先に口を開く

「勝手な行動して悪かった」

素直に謝る変に言い訳しても、余計怒らせるだけだ

優朔は、じっと俺を見ている

その視線が、いつもより重い

「紗凪ちゃんのことが大切なのは、もちろん分かる」

静かに、でもはっきりと言う

「でもお前はアイドルで、俳優だ」

一歩、距離を詰められる

「軽い行動は、自分を潰すことだってあるんだぞ」

――正論

何も言い返せない

「ましてや……」

少しだけ声が低くなる

「あいつの家に行くなんて」

空気が一段冷える

「記者が張ってたらどうするつもりだった」

言葉の一つ一つが重い

怒ってる

でもそれ以上に―俺を本気で心配してるのが分かる

「……それしか、紗凪を救う方法はないと思った」

正直に言う視線は逸らさない

「でも……お前の言うことはその通りだ」

一度、息を吐く

「悪い」

もう一度、ちゃんと謝る

少しの沈黙

張り詰めた空気

その中で――

優朔が、ふっと息を吐く

「……で?」

一言

「収穫は?」

顔を上げる

優朔の口元が、わずかに歪んでる

「何もないじゃ済まさないよ」

黒い笑顔

……こえぇ

背筋が少しゾクッとする

こいつ、ほんと敵に回したくねぇな

心底そう思う

黒騎士で1番怒らせてはならないのは言って優朔だ

でも――

「……あるに決まってるだろ」

ポケットに手を入れる

昨日の証拠

確かな手応え

視線を交わす

一瞬の間

そして――

「……だよな」

優朔が、ニヤッと笑う

俺も、つられて口元が上がる

ここからが、本番だ