振り返ると――
「陽貴くんったら、もうベッドに?」
胡桃が、くすっと笑いながら立っていた
「やらしー♡」
そう言いながらも、その顔は完全に嬉しそうで
視線を下げた瞬間、思わず息を止める
薄く透けるラグジュアリーな部屋着
明らかに“そのつもり”の格好
…めんどくせぇ
内心で舌打ちする
胡桃はそのまま距離を詰めてきて――
ぴたり、と身体をくっつけてくる
腕に、柔らかい感触
さらに――
俺の手を取って、自分の胸元へと持っていく
「ねぇ……♡」
甘ったるい声
……くそ
一瞬でも反応したら終わる
咄嗟に、頭を切り替える
「……まだ時間あるだろ」
軽く手を外して、少しだけ距離を取る
「そんな焦んなよ」
あえて、余裕のある声で言う
胡桃は一瞬きょとんとして――
「……そっか♡」
すぐに、にこっと笑う
完全にこっちのペースに乗ってきてる
……よし
流れを逃さない
そのまま、さりげなく話題を変える
「そうだ」
「撮影終わったら、胡桃にプレゼントしたいんだけどさ」
「アクセサリーとかどう?」
胡桃の表情が、一気に明るくなる
「えっ、うれしい!」
身を乗り出してくる
「胡桃、CH○NELが好きなの♡」
…ビンゴ
内心で確信する一気に距離を詰める
「何がいい?」
「ピアス?ネックレス?」
あくまで自然にでも、逃がさないように
胡桃は少し考えてから――
「んー……ピアスは去年可愛いの買ったからぁ」
「ネックレスがいいかも♡」
……来た
心臓が、ドクンと鳴る
「へぇ、去年買ったんだ」
「どんなの?」
「参考にしたいからさ、見せてよ」
できるだけ自然に違和感が出ないように
胡桃は、少しも疑う様子なく
「あー、それがねぇ」
軽く笑いながら
「最近、片方なくしちゃってぇ」
――その瞬間
心臓が、大きく音を立てる
でも、まだ終わりじゃない
決定打が必要
胡桃がアクセサリーケースを取り出す
パカッ、と開く
その中に――
あった
ハート型のピアス
見覚えのあるデザイン
ヘリで見つかったものと全く同じ
頭の中で、すべてが繋がる
証拠は揃った
言い逃れできないレベルで
それでも、顔には出さない
むしろ、少しだけ笑う
「へぇ……いいじゃん」
平静を装いながら
でも内心は――
終わったな、花宮胡桃
静かに、確信していた
