トップアイドルは白衣の天使に恋をする

撮影も終盤

照明の熱気と、スタッフの声が飛び交う中

ふいに、背後から小さな声

「陽貴くん、終わったら地下駐車場でね♡」

振り返ると、花宮胡桃

誰にも聞こえないように、耳元で囁く

「あぁ」

短く返す

それだけ

余計なことは言わない

――

「はい、オッケーです!」

その声と同時に、今日の撮影が終わる

周りが一気に緩む中

俺だけ、少し違う空気の中にいる気がした

はぁ…行くか

足取りは重い

正直、帰りたい

紗凪の待つ家に

あの温かい場所に

でも―時間がない

それだけで、足を動かす理由になる

エレベーターで地下へ降りる

ひんやりとした空気

人気の少ない静けさ

視線の先に、目立つ車

真っ赤なボディ

その中に――胡桃

窓が開いて、手招きされる

「陽貴くん、のって♡」

「……」

無言でドアを開けて、乗り込む

独特な香水の匂いが、車内に充満している

……ほんときつい

内心で呟きながらも、表情は変えない

車が走り出す

夜の街を抜けて

しばらくして、高級そうなマンションの前に止まる

「ついたよぉ♡」

胡桃が嬉しそうに言う