トップアイドルは白衣の天使に恋をする

店を出る頃には、すっかり夜も深くなっていた

「お腹いっぱい……」

思わず呟くと、横で小さく笑われる

「よかったな」

「うん、ごちそうさまでした」

自然と出る言葉

そのまま少し歩いて

「次行こう」

「まだあるの?」

「まぁね」

少し得意げで

「どこいくの?」

「内緒」

怪しく笑う

「気になるんだけど」

「いいから」

軽くあしらわれながら、車へ

乗り込んで、シートベルトを締める

エンジンがかかって、静かに走り出す

夜の街を抜けて、少しずつ人が減っていく

「ヒントは?」

「ない」

「意地悪」

「知ってる」

そんなやり取りに、思わず笑う

車はそのまま走り続けて――

やがて、少し高い場所で止まる

「着いた」

ドアを開けて外に出ると――

「……え」

思わず言葉を失う

目の前に広がるのは、キラキラした夜景

街の光が、まるで星みたいに広がっている

「……すごい」

自然と声が漏れる

さっきまでいた場所とは、まるで別世界

風が少しだけ強くて、髪が揺れる

「たまに来るんだ」

隣で、陽貴くんが呟く

「落ち着くから」


本当に、落ち着く

嫌なことも、全部少し遠くなる感じ

しばらく、2人で黙ってその景色を見る

何も言わなくてもいい時間

その沈黙が、心地いい

「……今日さ」

ふいに声がする

「ん?」

顔を向けると、少しだけ真面目な目

「無理してない?」

昨日と同じ問い

「ううんしてないよすごく楽しい」

これは本音

「……そっか」

小さく頷く

「ならいい」

その言い方が、すごく優しくて

ふわっと肩に何かがかかる

「寒いだろ」

上着を着せてくれる

「ありがとう」

少し大きいそれに包まれて、安心する

「……ほんとさ」

横から、低い声

「昨日より全然いい顔してる」

そのまま、少しだけ距離が近づく

きっとすごく心配してくれてるんだよね

毎日撮影があって激務の中で私のためにあいにきてくれて

「……連れてきてくれてありがとう」

夜景を見たまま、ぽつりと言う

「どういたしまして」

軽い返事

でも――

その声は、ちゃんと優しかった

冷たい風の中

温もりを感じながら

私は、静かに息を吐いた

私は幸せだな

そう思えた夜だった