紗凪side
静かな部屋
昨日よりは少しだけ落ち着いたはずなのに、心の奥の重たさはまだ消えていなかった
ぼんやりとソファに座っていると――
スマホが震える
画面を見ると、師長さんの名前
一瞬、指が止まる
でも、逃げるわけにはいかない
ゆっくり通話ボタンを押す
「……はい、一ノ瀬です」
『体調どう?』
いつもより少し柔らかい声
「大丈夫です」
反射的にそう答える
『無理してない?』
「……はい」
少しだけ間が空く
その沈黙のあと、師長さんが本題に入る
『今回の件だけど』
胸が、少しだけ強く鳴る
『1週間後に会議を開くことになったの』
分かってはいたけど、実際に言葉にされると重みが違う
『フライト資格についても含めて、正式に話し合う』
「……はい」
短く返す
『それまでは有給扱いにするから、しっかり休みなさい』
「……はい」
『今は無理に現場に戻る必要ない』
その言葉に、少しだけ胸が締め付けられる
戻れない、じゃなくて
戻らなくていい、って言われてるのに
どこか、置いていかれるような感覚
『一ノ瀬』
名前を呼ばれて、はっとする
『あなたがどういう看護師か、私たちはちゃんと分かってる』
静かで、でもはっきりした声
「……」
『だから今は、立て直すことだけ考えなさい』
厳しいけど、すごく優しい言い方
「……はい」
小さく答える
『また連絡するわね』
「はい、失礼します」
通話が切れる
スマホを見つめたまま、しばらく動けなかった
……会議かぁ
1週間後
その結果で、自分の立場が変わるかもしれない
フライトに戻れるかどうかも、分からない
「……」
ぎゅっと、手を握る
怖い
正直、すごく怖い
でも落ち込んでるだけじゃ、何も変わらない
昨日、陽貴くんに言われた言葉が浮かぶ
“紗凪ちゃんなら立ち直れる”
梓の言葉も
“全部自分のせいって決めつけるのは違う”
「……っ」
ゆっくり息を吐く
このままじゃダメだ
少しずつでもいいから、戻らないと
その時
――ブブッ
またスマホが震える
画面を見ると、今度は梓
少しだけ気持ちが緩む
通話に出ると、いつも通りの声
『紗凪、今何してる?』
「……ぼーっとしてた」
正直に答えると、少しだけ笑われる
『でしょね』
「なにそれ」
『だからさ』
少し間を置いてから
『ショッピング行こ』
「……え?」
思わず聞き返す
『家にいても余計なこと考えるでしょ』
図星すぎる
『外出て、ちょっと気分変えよ』
軽い言い方
でもその裏にある気遣いは、ちゃんと分かる
……優しいなぁ梓は…
胸が、じんわり温かくなる
こんな風に、何も言わなくても分かってくれる人がいる
それだけで、少し救われる
「……うん」
自然と、頷いていた
『ほんと?』
「うん、行く」
少しだけ、声が軽くなる
『よし、じゃあ準備して』
「分かった」
通話を切る
スマホを握ったまま、少しだけ天井を見る
「……いい友達持ったなぁ」
ぽつりと呟く
少しだけ、前に進めそうな気がした
「……よし」
小さく気合を入れて、立ち上がる
クローゼットに向かいながら、服を決める
ほんの少しだけ
足取りが軽くなっていた
静かな部屋
昨日よりは少しだけ落ち着いたはずなのに、心の奥の重たさはまだ消えていなかった
ぼんやりとソファに座っていると――
スマホが震える
画面を見ると、師長さんの名前
一瞬、指が止まる
でも、逃げるわけにはいかない
ゆっくり通話ボタンを押す
「……はい、一ノ瀬です」
『体調どう?』
いつもより少し柔らかい声
「大丈夫です」
反射的にそう答える
『無理してない?』
「……はい」
少しだけ間が空く
その沈黙のあと、師長さんが本題に入る
『今回の件だけど』
胸が、少しだけ強く鳴る
『1週間後に会議を開くことになったの』
分かってはいたけど、実際に言葉にされると重みが違う
『フライト資格についても含めて、正式に話し合う』
「……はい」
短く返す
『それまでは有給扱いにするから、しっかり休みなさい』
「……はい」
『今は無理に現場に戻る必要ない』
その言葉に、少しだけ胸が締め付けられる
戻れない、じゃなくて
戻らなくていい、って言われてるのに
どこか、置いていかれるような感覚
『一ノ瀬』
名前を呼ばれて、はっとする
『あなたがどういう看護師か、私たちはちゃんと分かってる』
静かで、でもはっきりした声
「……」
『だから今は、立て直すことだけ考えなさい』
厳しいけど、すごく優しい言い方
「……はい」
小さく答える
『また連絡するわね』
「はい、失礼します」
通話が切れる
スマホを見つめたまま、しばらく動けなかった
……会議かぁ
1週間後
その結果で、自分の立場が変わるかもしれない
フライトに戻れるかどうかも、分からない
「……」
ぎゅっと、手を握る
怖い
正直、すごく怖い
でも落ち込んでるだけじゃ、何も変わらない
昨日、陽貴くんに言われた言葉が浮かぶ
“紗凪ちゃんなら立ち直れる”
梓の言葉も
“全部自分のせいって決めつけるのは違う”
「……っ」
ゆっくり息を吐く
このままじゃダメだ
少しずつでもいいから、戻らないと
その時
――ブブッ
またスマホが震える
画面を見ると、今度は梓
少しだけ気持ちが緩む
通話に出ると、いつも通りの声
『紗凪、今何してる?』
「……ぼーっとしてた」
正直に答えると、少しだけ笑われる
『でしょね』
「なにそれ」
『だからさ』
少し間を置いてから
『ショッピング行こ』
「……え?」
思わず聞き返す
『家にいても余計なこと考えるでしょ』
図星すぎる
『外出て、ちょっと気分変えよ』
軽い言い方
でもその裏にある気遣いは、ちゃんと分かる
……優しいなぁ梓は…
胸が、じんわり温かくなる
こんな風に、何も言わなくても分かってくれる人がいる
それだけで、少し救われる
「……うん」
自然と、頷いていた
『ほんと?』
「うん、行く」
少しだけ、声が軽くなる
『よし、じゃあ準備して』
「分かった」
通話を切る
スマホを握ったまま、少しだけ天井を見る
「……いい友達持ったなぁ」
ぽつりと呟く
少しだけ、前に進めそうな気がした
「……よし」
小さく気合を入れて、立ち上がる
クローゼットに向かいながら、服を決める
ほんの少しだけ
足取りが軽くなっていた
