トップアイドルは白衣の天使に恋をする


どうするかなこの状況。

なんて考えていると

「みなさん、落ち着いてください。
人が集まりすぎるのはよくありません。
ここは僕たちで対応しますので、解散してください」

落ち着いた声が、場を制した。

助かった。

視線を向けると、そこにいたのは優朔だった。

状況を一瞬で把握して、最善の行動を取る。

やっぱりこいつはすごい。

「はーい、みなさーん散ってくださーい」
「写真は撮らないでくださいね、動画も消してくださいー」

振り返ると、蒼依と奏も野次馬の対応に回っていた。

さすがメンバー達、仕事が早い。

帽子とマスクのおかげか、まだ誰も俺たちに気づいていない。

メンバーとスタッフの対応で、徐々に人がはけていく。

気づけばその場には、

俺たちとスタッフ、そして——

あの看護師の女性だけが残っていた。

「お姉さん、僕たちにできることはありますか?」

優朔が静かに声をかける。

すると女性は、迷いなく言った。

「今から言う内容を、メモしてください」

「22時37分、心停止。胸骨圧迫開始。
 22時40分、心拍再開——」

淡々と、しかし正確に。

優朔がすぐにメモを取り始める。



その時——

ピーポーピーポー——

遠くからサイレンの音が近づいてきた。

やがて救急車がビルの前に止まり、救急隊員が駆け込んでくる。「救急隊です。状況は?」

「心停止から約3分後にROSCしています。
中央大学病院へ搬送お願いします。私も同乗します」

※ROSC:心拍が再開すること

的確で、無駄のない引き継ぎ。

ロスク……?

意味はわからない。

でも——

助かったんだな。

それだけは、はっきりわかった。

男性はストレッチャーに乗せられ、そのまま救急車へ運ばれていく。

そして——

彼女が、立ち上がった。

そのまま、こちらを見る。

ドクン……

ドクン……

視線が合うだけで、心臓がうるさい。

今までこんなこと今まで一度もなかった。

「ありがとうございました」

そう言って、軽く頭を下げる。

「あなたがいなければ、患者さんはとても危険でした」

「いえ……俺は119押しただけなんで……」

少し俯いて答える。

声、バレてないよな……

「それでも、です」

やわらかい声。

「こういう場面で電話をかけるのは、とても勇気がいることです。
あなたの行動が、患者さんを救いました」

そう言って——

ふわっと、笑った。