トップアイドルは白衣の天使に恋をする

どれくらい泣いていたのか分からない

涙も少し落ち着いて、ぼーっと天井を見ていた時だった

――ピンポーン

インターホンの音が鳴る

こんな時間に?

体を起こす気力もあまりないまま、ゆっくり玄関へ向かう

ドアを開けた瞬間

「紗凪!」

勢いよく名前を呼ばれて、顔を上げる

「……梓?」

そこにいたのは、息を少し切らした梓だった

「林くんから聞いた」

真っ直ぐな目で、そう言われる

その一言で、胸がぎゅっとなる

「大丈夫?」

優しく声をかけられた瞬間

また、涙が滲みそうになる

「……入って」

小さくそう言うと、梓はすぐに頷いて中に入ってきた

リビングに戻ると、さっきと同じ場所に座り込む

梓も隣にしゃがむ

「……で?」

静かに促される

その言い方が、いつも通りで

少しだけ安心する

「……ミス、した」

ぽつりとこぼす

それだけで、全部分かるでしょっていう言い方

でも梓はすぐに首を振った

「ありえない」

はっきりとした一言

迷いもなく

「紗凪がそんなミスするわけないでしょ」

強い口調

でも、責める感じは一切ない

ただ、信じてるって分かる言い方

「……でも、なかったの」

視線を落としたまま言う

「ちゃんと確認したのに……アドレナリンも、ルートも……なくて……」

思い出すだけで、また胸が苦しくなる

「患者さん、危なかった……」

声が震える

すると梓は少しだけ眉を寄せた

「それ、本当に“紗凪のミス”って言い切れる?」

「……え?」

顔を上げる

「ちゃんと確認したんでしょ?」

「……うん」

「じゃあおかしいじゃん」

シンプルな答え

でも、その一言が頭に引っかかる

「フライト前に触れる人、他にいなかったの?」

「……」

考える

でも、あの時はそんな余裕なかった

「……分からない」

正直に答えると、梓はふっと息を吐いた

「まあ、今すぐ答え出す必要ないけど」

少しだけトーンを落とす

「少なくとも、“全部自分のせい”って決めつけるのは違う」

その言葉に、胸が少しだけ軽くなる

「……でも、結果は出てる」

小さく言うと、梓はすぐに返す

「医療って結果だけじゃないでしょ」

「……」

「過程も、判断も、全部含めてじゃないの?」

真っ直ぐな言葉

逃げ場を作らないけど、ちゃんと支えてくれる言い方

「紗凪はちゃんとやったんでしょ?」

「……うん」

「じゃあそれがまず事実」

言い切る

その強さに、少しだけ救われる

「それに」

少しだけ表情を緩めて続ける

「周りみんな言ってるよ“あの紗凪がそれはありえない”って」

「……」

林くんも、師長も、ドクターも

さっきの言葉が頭をよぎる

「ちゃんと見てくれてる人、いるじゃん」

その一言で、胸の奥がじんわり温かくなる

「……うん」

小さく頷く

涙がまた滲みそうになるけど、さっきとは少し違う

「まあでも」

梓が少しだけ笑う

「今日はとことん落ち込んでいいと思うよ」

「え?」

「無理に立て直そうとすると、余計しんどいから」

肩を軽く叩かれる

「その代わり、明日からまた考えればいい」

シンプルな言葉

でも、すっと入ってくる

「……ありがとう」

自然と、そう言葉が出た

梓は軽く肩をすくめる

「いい友達でしょ、私」

少しだけ得意げな顔

そのいつも通りの感じに、思わず小さく笑ってしまう

「……うん、本当に」

こんな時に来てくれる人がいること

信じてくれる人がいること

それだけで、少しだけ呼吸がしやすくなる

さっきまでぎゅっと締め付けられていた胸が、ほんの少しだけ軽くなった気がした