トップアイドルは白衣の天使に恋をする

更衣室に入って、ロッカーの前に立つ

金属の扉に映る自分の顔が、やけに青白く見えた

フライトスーツのファスナーに手をかける

でも――動かない

指先が、細かく震えている

…怖い

喉の奥が、きゅっと締まる

こんな感覚、初めてだった

現場に立つのが怖いなんて、思ったこと一度もなかったのに

また同じことが起きたら……?

また、足りなかったら……?

また、誰かを危険に晒したら……?

頭の中に、さっきの光景が何度も蘇る

バッグを探る手

ない、って分かった瞬間の血の気が引く感覚

ドクターの低い声

“患者、危なかったぞ”

「……っ」

息が詰まる

心臓の音がうるさい

自分の鼓動だけが、やけに大きく響く


何度も、何度も思い返す

朝の準備

一つ一つチェックした記憶

手順も、順番も、全部覚えてる

なのに

なんで……?

答えは出ない

でも

“なかった”のは事実

それだけが、現実として残る

「……はぁ」

力なく息を吐く

そのまま、ゆっくりとその場に座り込む

膝を抱えると、体の震えが余計に分かる

止まらない

じわじわと、また涙が滲む

「……私、何してるんだろ」

ぽつりとこぼれる

今まで積み上げてきたものが、音を立てて崩れていくみたいで

自信なんて、どこにも残っていない

ただ

“怖い”だけが、残っていたの奥が、きゅっと締まる

こんな感覚、初めてだった

現場に立つのが怖いなんて、思ったこと一度もなかったのに