「一ノ瀬」
師長に呼ばれて、ナースステーションの奥へ入る
周りの空気が、いつもと違う
ざわついてる
誰もが、落ち着かない顔をしている
「……さっきの件、聞いた」
静かな声
もう、その一言で分かる
胸が、ぎゅっと締め付けられる
「はい……」
視線を上げられない
「フライト側から連絡きてる」
一瞬、息が止まる
「今日は、1件目で降りることになった」
――ドクン
頭が真っ白になる
「……え」
聞き返す声が、自分でも分かるくらい掠れていた
「フライトナースは、現場で致命的なミスがあれば資格が問われることは知ってるわね」
淡々とした説明
でも、その一つ一つが重い
「今回は“未然に防げた可能性がある事案”として扱われる」
未然に防げた
つまり
――私の責任
「……はい」
それしか言えない
悔しいとか、悲しいとか、そういう感情より先に
ただ、現実だけが突きつけられる
その時
後ろの方から声が聞こえた
「いや、ありえないって……」
「一ノ瀬さんがそんなミスする?」
「絶対なんかおかしいやろ……」
ICUのスタッフたち
みんな、口々に言っている
否定の言葉
信じられないって声
それが逆に、苦しい
でも……実際、なかったの、
事実は変わらない
どれだけ否定されても結果は、出ている
師長が小さく息をつく
そして、少しだけ声のトーンを落とした
「……一ノ瀬」
「はい」
「今日はもう、上がりなさい」
「……え」
思わず顔を上げる
「でも……」
言いかけた言葉を、優しく遮られる
「その顔で現場立たれても困る」
厳しいようでいて、どこか柔らかい言い方
「今は、無理に頑張るタイミングじゃない」
「……」
何も言えない
「ちゃんと落ち着いてから戻ってきなさい」
その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる
でも同時に
情けなさが込み上げる
「……すみません」
また、それしか出てこない
「謝らなくていい」
即座に返される
「ただ、次に同じことをしないようにするそれだけ」
――はい
そう返したつもりなのに、声が出なかった
小さく頷くだけで精一杯だった
ナースステーションを出る
背中に、いくつもの視線を感じる
心配
戸惑い
信じられないっていう空気
全部、分かる
……ごめんなさい
誰に向けてかも分からないまま、心の中で呟く
師長に呼ばれて、ナースステーションの奥へ入る
周りの空気が、いつもと違う
ざわついてる
誰もが、落ち着かない顔をしている
「……さっきの件、聞いた」
静かな声
もう、その一言で分かる
胸が、ぎゅっと締め付けられる
「はい……」
視線を上げられない
「フライト側から連絡きてる」
一瞬、息が止まる
「今日は、1件目で降りることになった」
――ドクン
頭が真っ白になる
「……え」
聞き返す声が、自分でも分かるくらい掠れていた
「フライトナースは、現場で致命的なミスがあれば資格が問われることは知ってるわね」
淡々とした説明
でも、その一つ一つが重い
「今回は“未然に防げた可能性がある事案”として扱われる」
未然に防げた
つまり
――私の責任
「……はい」
それしか言えない
悔しいとか、悲しいとか、そういう感情より先に
ただ、現実だけが突きつけられる
その時
後ろの方から声が聞こえた
「いや、ありえないって……」
「一ノ瀬さんがそんなミスする?」
「絶対なんかおかしいやろ……」
ICUのスタッフたち
みんな、口々に言っている
否定の言葉
信じられないって声
それが逆に、苦しい
でも……実際、なかったの、
事実は変わらない
どれだけ否定されても結果は、出ている
師長が小さく息をつく
そして、少しだけ声のトーンを落とした
「……一ノ瀬」
「はい」
「今日はもう、上がりなさい」
「……え」
思わず顔を上げる
「でも……」
言いかけた言葉を、優しく遮られる
「その顔で現場立たれても困る」
厳しいようでいて、どこか柔らかい言い方
「今は、無理に頑張るタイミングじゃない」
「……」
何も言えない
「ちゃんと落ち着いてから戻ってきなさい」
その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる
でも同時に
情けなさが込み上げる
「……すみません」
また、それしか出てこない
「謝らなくていい」
即座に返される
「ただ、次に同じことをしないようにするそれだけ」
――はい
そう返したつもりなのに、声が出なかった
小さく頷くだけで精一杯だった
ナースステーションを出る
背中に、いくつもの視線を感じる
心配
戸惑い
信じられないっていう空気
全部、分かる
……ごめんなさい
誰に向けてかも分からないまま、心の中で呟く
