紗凪side
どれくらい泣いていたのか、分からない
気づいた頃には、呼吸も少し落ち着いていて、震えもさっきよりは収まっていた
ポケットの中でPHSが鳴った
――師長
画面を見た瞬間、胸がぎゅっとなる
陽貴くんの腕の中で、まだ少しだけ震えていた体が止まる
少しだけ距離を取って、通話ボタンを押した
「……はい、一ノ瀬です」
『今どこ?』
いつもより少しだけ早い口調
「屋上に……」
『すぐICU戻れる?至急』
――至急
その一言で、思考が一気に切り替わる
「……はい、戻ります」
『お願い』
短く切れる通話
数秒、無言
さっきまでの感情が、まだ胸の奥に残ってる
顔を上げる
「……呼ばれた」
小さくそう言うと、陽貴くんがじっとこちらを見る
「大丈夫?」
その一言に、一瞬だけ言葉に詰まる
大丈夫じゃない
全然でも…
「……うん」
そう答えるしかなかった
仕事だから
行かなきゃいけない場所だから
「行く」
立ち上がる
足はまだ少し重い
でも、さっきみたいに崩れそうではない
一歩踏み出そうとした瞬間――
手首を軽く掴まれる
「……無理すんなよ」
低く、でも少しだけ優しい声
「さっきみたいになる前に、ちゃんと言え」
まっすぐな視線
逃げられない
「……うん」
小さく頷くと、手がゆっくり離れる
「行ってこい」
背中を押されるような一言
私は一度だけ深呼吸をして、屋上の扉に手をかけた
そしてICUへ向かって、歩き出した
どれくらい泣いていたのか、分からない
気づいた頃には、呼吸も少し落ち着いていて、震えもさっきよりは収まっていた
ポケットの中でPHSが鳴った
――師長
画面を見た瞬間、胸がぎゅっとなる
陽貴くんの腕の中で、まだ少しだけ震えていた体が止まる
少しだけ距離を取って、通話ボタンを押した
「……はい、一ノ瀬です」
『今どこ?』
いつもより少しだけ早い口調
「屋上に……」
『すぐICU戻れる?至急』
――至急
その一言で、思考が一気に切り替わる
「……はい、戻ります」
『お願い』
短く切れる通話
数秒、無言
さっきまでの感情が、まだ胸の奥に残ってる
顔を上げる
「……呼ばれた」
小さくそう言うと、陽貴くんがじっとこちらを見る
「大丈夫?」
その一言に、一瞬だけ言葉に詰まる
大丈夫じゃない
全然でも…
「……うん」
そう答えるしかなかった
仕事だから
行かなきゃいけない場所だから
「行く」
立ち上がる
足はまだ少し重い
でも、さっきみたいに崩れそうではない
一歩踏み出そうとした瞬間――
手首を軽く掴まれる
「……無理すんなよ」
低く、でも少しだけ優しい声
「さっきみたいになる前に、ちゃんと言え」
まっすぐな視線
逃げられない
「……うん」
小さく頷くと、手がゆっくり離れる
「行ってこい」
背中を押されるような一言
私は一度だけ深呼吸をして、屋上の扉に手をかけた
そしてICUへ向かって、歩き出した
