紗凪side
3日目
今日はフライト当番の日
一応撮影現場にも顔は出すが今日はヘリ優先の日
フライトスーツに着替え、撮影現場に入ると一瞬ざわつく空気
「本物のフライトナースだ……」
そんな声に、少しだけ照れながらも軽く挨拶を交わす
陽貴くん、優朔さん、奏くん、蒼依くん。
それぞれと短く言葉を交わし、彼らは撮影へ入っていく
私はヘリ待機へ
――しばらくして
出動要請
一気に思考が切り替わる
「林くん、現場お願いね」
「任せてください!一ノ瀬さんも気をつけて」
その言葉に背中を押され、ヘリへ向かう
ローター音
張り詰めた空気
現場に到着患者は重症
迷っている時間はない
「この場で処置入る」
「はい」
いつも通り
冷静に
手順通りに
……のはずだった
「……え?」
ナースバッグを開く
手を入れる
探す
アドレナリン……
――ない
一瞬、思考が止まる
そんなはずない
朝、物品チェックした確実に入れた
もう一度確認
……ない
指先が冷たくなる
なんで……
「一ノ瀬?」
ドクターの声で現実に引き戻される
「……すみません、アドレナリンがありません」
一瞬で空気が変わる
「は?」
短い、低い声
当然だ
「ルートは?」
「……」
延長チューブも、見当たらない
嘘……
背中に冷や汗が流れる
「……一部物品が欠損しています」
自分でも信じられない言葉
でも、事実
「代替でいく時間ない」
「……はい」
震えそうになる手を抑える
思考を無理やり戻す
今やるべきことだけを見る
別ルートで確保
手押しで投与
一つ一つ、無理やり繋ぐ
落ち着いて……
今はそれしかない
処置を続ける
判断を重ねる
動悸が止まらなかった
「搬送します」
ヘリへ戻る
機内でも処置を継続
ようやく病院へ到着
引き継ぎを終えた瞬間、力が抜けた
そのとき
「一ノ瀬」
フライトドクターに呼ばれる
「……はい」
振り返る
「今の、どういうこと?」
静かな声
でも明らかに怒っている
「……確認不足です」
「お前が?」
信じられない、という顔
「いつもの一ノ瀬なら、絶対ありえないミスだろ」
胸が締め付けられる
「患者、危なかったぞ」
――その一言で、全部が崩れる
……私が、危険に晒した
呼吸が浅くなる
必死に涙を堪える
「……すみま…せん」
それしか言えない
ちゃんと確認したのに
なんで……
答えは出ない
でも“なかった”のは事実
それが全て
3日目
今日はフライト当番の日
一応撮影現場にも顔は出すが今日はヘリ優先の日
フライトスーツに着替え、撮影現場に入ると一瞬ざわつく空気
「本物のフライトナースだ……」
そんな声に、少しだけ照れながらも軽く挨拶を交わす
陽貴くん、優朔さん、奏くん、蒼依くん。
それぞれと短く言葉を交わし、彼らは撮影へ入っていく
私はヘリ待機へ
――しばらくして
出動要請
一気に思考が切り替わる
「林くん、現場お願いね」
「任せてください!一ノ瀬さんも気をつけて」
その言葉に背中を押され、ヘリへ向かう
ローター音
張り詰めた空気
現場に到着患者は重症
迷っている時間はない
「この場で処置入る」
「はい」
いつも通り
冷静に
手順通りに
……のはずだった
「……え?」
ナースバッグを開く
手を入れる
探す
アドレナリン……
――ない
一瞬、思考が止まる
そんなはずない
朝、物品チェックした確実に入れた
もう一度確認
……ない
指先が冷たくなる
なんで……
「一ノ瀬?」
ドクターの声で現実に引き戻される
「……すみません、アドレナリンがありません」
一瞬で空気が変わる
「は?」
短い、低い声
当然だ
「ルートは?」
「……」
延長チューブも、見当たらない
嘘……
背中に冷や汗が流れる
「……一部物品が欠損しています」
自分でも信じられない言葉
でも、事実
「代替でいく時間ない」
「……はい」
震えそうになる手を抑える
思考を無理やり戻す
今やるべきことだけを見る
別ルートで確保
手押しで投与
一つ一つ、無理やり繋ぐ
落ち着いて……
今はそれしかない
処置を続ける
判断を重ねる
動悸が止まらなかった
「搬送します」
ヘリへ戻る
機内でも処置を継続
ようやく病院へ到着
引き継ぎを終えた瞬間、力が抜けた
そのとき
「一ノ瀬」
フライトドクターに呼ばれる
「……はい」
振り返る
「今の、どういうこと?」
静かな声
でも明らかに怒っている
「……確認不足です」
「お前が?」
信じられない、という顔
「いつもの一ノ瀬なら、絶対ありえないミスだろ」
胸が締め付けられる
「患者、危なかったぞ」
――その一言で、全部が崩れる
……私が、危険に晒した
呼吸が浅くなる
必死に涙を堪える
「……すみま…せん」
それしか言えない
ちゃんと確認したのに
なんで……
答えは出ない
でも“なかった”のは事実
それが全て
