トップアイドルは白衣の天使に恋をする

「一ノ瀬さん、おはようございます!」

「紗凪さん今日もよろしく!」

奏くんやスタッフさんに声をかけられて、現実に引き戻される

「おはようございます」

笑顔で返す

いつも通り

……のつもりだったけど

ふと、昨日の言葉が頭をよぎる

“誰にでも笑う”

“距離近い”

“無防備”

「……」

正直今まで人との距離感なんて考えたこともなかった

でも今日は少しだけ意識した近すぎないように

ちゃんと線を引くように

それだけで、少しだけ空気の感じ方が変わった


視線を感じて顔を上げる

少し離れた場所にいる陽貴君と、また目が合った

今度は逸らさないほんの少しだけ

こっちも、目を逸らさずに見返す

すると陽貴君がわずかに目を細めて笑った

――その表情に、胸がきゅっとなる

……逃げたくない

昨日は、ただ流されるだけだった

でも今日は違う

ちゃんと考えて、ちゃんと向き合いたい

怖いまま終わらせるんじゃなくてちゃんと知りたい

あの人のことも

――自分の気持ちも

小さく息を吸う

そして心の中で、静かに決めた

ちゃんと、素直になる

逃げるんじゃなくて、向き合う

そう決めた瞬間

昨日より少しだけ、世界がはっきり見えた気がした