トップアイドルは白衣の天使に恋をする

紗凪side

――す、すごい

目の前で繰り広げられている光景に、私は完全に圧倒されていた

「陽貴くぅ〜ん♡」

甘ったるい声

ぴったり腕に絡みつく女の人

……近い近い近い

しかも距離感がゼロ

私は思わず固まった

隣では林くんも顔を引き攣らせている

「……うわぁ」

小さく漏れた声

「林くん知ってる人?」

「花宮胡桃っす最近めちゃ有名な女優」

「へぇ……」


でもなんというか圧がすごい

そして何より陽貴君への距離が近すぎる

胸まで腕に押し付けてるし……

陽貴君の顔が引き攣ってる

王子様キャラって梓も言ってたし……
アイドルって大変なんだなぁ

ぼんやりそんなことを考える

すると林くんがヒソッと耳打ちしてきた



「一ノ瀬さん、顔死んでます」

「えっ?!」

慌てて表情を戻す

そんなに出てた?!

「いや〜でもまぁ、あれはキツいっすね」

林くんが苦笑する

「陽貴さん、普通に嫌そうですし」

そう言われて、もう一度そっと陽貴君を見る

たしかに表情は笑ってるけど目が全然笑ってない

というか若干冷たい

「ねぇ〜今日終わったらご飯行こ〜?」

「ごめん用事があるんだ」

即答

あ、断ったしかもかなり食い気味で

「え〜なんでぇ?」

それでも全然めげない花宮さん

すごいメンタルだ

その時

ふいに陽貴君と目が合った

――ドクン

心臓が跳ねる

陽貴君はほんの少しだけ困ったように眉を下げて

小さく肩をすくめた

まるで

“助けて”って言ってるみたいに

……いやいや

私にどうしろと?!

視線を逸らした瞬間

隣で林くんがまたボソッと呟く

「……あれ、完全に修羅場の匂いするんすけど」

「しゅ、修羅場って……!」

「いや絶対これから色々起きるやつっすよ」

そう言って林くんは遠い目をした

……私も、なんだかそんな気がしてきた