歌姫の場所。

「きょ、今日は場所を取れなかったので…。
そっ、それに雪も降ってて
ギターが悪くなります…」

そう。頭では分かっていた。
こんな雪の日にはギターは向かないであろう。

しかし私は、ギターを悪くしてでも
雪の降るこの日に路上ライブをしたかった。
…私は歌いたかった。
人に私の歌を聞いてもらいたかった。

「場所なんてここ以外にもあるよ ?
ギターだってさあ…。
君はギターより歌うことを
主としてやってるんだから
カセットとかを流してやれるじゃん」

男の子の考えはもっともである。
私にだってカセットを
流すことくらいは思いついた。