クロとシロと、時々ギン

 いつもの、何もかもを見透かしたような視線。白谷吟は、まるで「君の気持ち、分かってるよ」と言いたげに笑っている気がして、思わずスイッと目を逸らしてしまう。

 私の気持ちって、やっぱり……?

 自問自答しながら逸らした視線は、そのまま流れるようにシロ先輩へ向かった。
 思いがけずバチリと視線が重なる。不意打ちを食らった私は、露骨に視線を逸らしてしまった。

 ああ、何をやっているんだ私は。感じ悪い……。

 そんな自己嫌悪が、ドキドキと跳ねる鼓動とともに大きくなっていく。
 私とシロ先輩の間に流れる微妙な空気を察してか、それとも楽しんでいるのか、白谷吟がカラッとした声でシロ先輩を揶揄う。

「もう。史郎が睨むから、矢城さんも萩田さんもビビってるじゃん」
「はぁ? 別に睨んでねぇし」
「ああ、もう。ごめんね、二人とも。怖い思いさせて」
「だから睨んでねぇし」
「はいはい。史郎は矢城さんに構ってもらえなくて機嫌が悪いんだよね」

 カラカラと笑いながら言い放つ白谷吟に、シロ先輩が食い気味に抗議する。

「バカ、吟。お前何言ってんだ。なんで俺がクロなんかに……」

 やっぱり、怒っていたのか……。

 内心でため息をつきつつシロ先輩に視線を向けると、怒りで顔を赤く染めたシロ先輩が幼馴染を締め上げていた。
 珍しい取り乱し方にポカンとしていると、隣で萌乃が「やっぱりね」と小声で納得の声を上げる。その声音は、どこか満足そうだ。
 締め上げられている白谷吟もどこか楽しそうで、やめればいいのにさらに煽る。

「ほら、だって前に飲み会で、『クロをいじめていいのは俺だけだ〜』って言ってたじゃない?」
「は? なんだそれ? 俺はそんなこと知らん。どうせお前のでっち上げだろ」
「本当に言ってたんだって。ねぇ、矢城さん?」
「えっ? あ〜、はい。確かにそんなこと言ってましたね」

 振られた質問にさらりと答えたあと、ハッと気づく。

 これは……覚えていないふりをした方がよかったのでは。

 私の答えを聞いた萌乃と白谷吟は明らかにニヤけ顔になり、対してシロ先輩は耳まで真っ赤になっている。
 その反応に、私は慌てて言葉を足した。

「でも、あれってコンビだからって意味ですよね。コンビだから揶揄っていいのは俺だけっていう……」