私の心臓は、少し前からおかしい。今もドキドキと激しく打ちつけている。このままでは、そのうち耐えきれず壊れてしまうかもしれない。
壊れてしまう前に何とかしなければと思うのに、どうすればいいのか分からず途方に暮れる毎日。
原因が分からないわけではない。むしろ、分かりすぎるほど分かっている。だから困っているのだ。
私の心臓が激しく打つ理由。それは、今、隣でぼうっと空を見上げているシロ先輩にある。
コンビを組んで四年。これまでどんなに近くにいても、こんなふうにドキドキしたことなんてなかった。
並んで歩いたこともある。向かい合って食事をしたこともある。肩を寄せ合ってパソコン画面を睨んだことだってあった。
シロ先輩が近くにいたシチュエーションなんていくらでもあったのに。どんなに距離が近くても全然何ともなかったのに。
あの時から、私の心臓は狂いだした。
数か月前、課を越えて動いていたチームの後輩に言われた一言。
“明日花さんは、白谷さんではなく、八木さんがお好きだったんですね”
それが私の心臓を暴れさせる引き金を引いたのは間違いない。
新入社員の萩田萌乃は、自身の教育係である白谷吟に好意を寄せている。白谷とよく言葉を交わす私を恋のライバルだと勘違いしていた萌乃が、その誤解を詫びた時の言葉がこれだった。
それ自体が勘違いだと言いたかったのに、私は咄嗟に否定できなかった。
それどころか、萌乃に指摘されてからというもの、困ったことにシロ先輩が輝いて見えるのだ。
仕事が終わった時のどや顔も、私を揶揄うときのやんちゃな顔も、少し俯いて真剣に仕事をする横顔も。今だって、何も考えていないだろうぼんやりした、ちょっと間の抜けた顔でさえ輝いて見える。
盗み見ていた横顔から目が離せずにいると、突然シロ先輩がこちらを向いた。
「なんだよ、クロ。そんなに見つめたくなるほど、俺はイケメンか?」
「なっ! えっ? はっ? な、何言ってるんですか? 自分でイケメンとか言います?」
明らかに動揺しつつも、なんとか言い返す。そんな私にニシシと笑い、シロ先輩は腰を上げた。
「まぁ、吟のようなイケメンではないな。悔しいが」
壊れてしまう前に何とかしなければと思うのに、どうすればいいのか分からず途方に暮れる毎日。
原因が分からないわけではない。むしろ、分かりすぎるほど分かっている。だから困っているのだ。
私の心臓が激しく打つ理由。それは、今、隣でぼうっと空を見上げているシロ先輩にある。
コンビを組んで四年。これまでどんなに近くにいても、こんなふうにドキドキしたことなんてなかった。
並んで歩いたこともある。向かい合って食事をしたこともある。肩を寄せ合ってパソコン画面を睨んだことだってあった。
シロ先輩が近くにいたシチュエーションなんていくらでもあったのに。どんなに距離が近くても全然何ともなかったのに。
あの時から、私の心臓は狂いだした。
数か月前、課を越えて動いていたチームの後輩に言われた一言。
“明日花さんは、白谷さんではなく、八木さんがお好きだったんですね”
それが私の心臓を暴れさせる引き金を引いたのは間違いない。
新入社員の萩田萌乃は、自身の教育係である白谷吟に好意を寄せている。白谷とよく言葉を交わす私を恋のライバルだと勘違いしていた萌乃が、その誤解を詫びた時の言葉がこれだった。
それ自体が勘違いだと言いたかったのに、私は咄嗟に否定できなかった。
それどころか、萌乃に指摘されてからというもの、困ったことにシロ先輩が輝いて見えるのだ。
仕事が終わった時のどや顔も、私を揶揄うときのやんちゃな顔も、少し俯いて真剣に仕事をする横顔も。今だって、何も考えていないだろうぼんやりした、ちょっと間の抜けた顔でさえ輝いて見える。
盗み見ていた横顔から目が離せずにいると、突然シロ先輩がこちらを向いた。
「なんだよ、クロ。そんなに見つめたくなるほど、俺はイケメンか?」
「なっ! えっ? はっ? な、何言ってるんですか? 自分でイケメンとか言います?」
明らかに動揺しつつも、なんとか言い返す。そんな私にニシシと笑い、シロ先輩は腰を上げた。
「まぁ、吟のようなイケメンではないな。悔しいが」
