クロとシロと、時々ギン

 ムキになって言い返すと、シロ先輩はわざとらしいほど驚いた顔を見せた。そしてすぐに、今度は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「それでこそいつものクロだ! いつもの調子でやれ。確かに今回はちょっとタイトなスケジュールになると思うけど、このチームにはなんたって吟がいるんだ。コイツに任せておけば問題ない」

 シロ先輩は親指で白谷吟を指す。白谷吟は苦笑しながら、その手をそっと退けた。
 確かにその通りだ。彼がいれば大抵のことはうまくいく。それに新人とはいえ萌乃もいる。そして、私が全幅の信頼を置くシロ先輩もいる。私一人が慌てる必要なんてない。
 私は一人ひとりの顔を順番に見た。全員の視線が私に向けられている。
 大丈夫。きっと乗り越えられる。自然とそう思えた。
 背筋をスッと伸ばす。

「皆さん、頑張りましょう!」

 私の言葉に、みんなが笑顔で応えてくれた。
 その後、キリの良いところまで作業をして仕事を終えた。
 今日は本来なら休日だ。そんなにガツガツ働くものじゃない。
 帰り支度をしながら、私は声をかけた。

「このあと、ご飯食べに行きませんか?」

 シロ先輩が少し考えてから答える。

「そうだな。昼メシもまだだし……せっかくの休みだ。のんびり飯食ってから帰るか。なぁ、吟。萩田もどうだ?」

 シロ先輩が白谷吟を問答無用で誘い、萌乃の返事を待つ。

「あ、はい! お邪魔でなければ……ぜひ」
「よし! 決起集会だ。行くぞ、クロ」

 シロ先輩がニカッと笑う。
 私もつい頬を緩ませ、大きく返事をした。

「はい! あ、でも、どこに行きます? ここの最上階行っちゃいます? 経費で」

 調子に乗って言うと、すかさずシロ先輩が白谷吟に話を振る。

「だとよ〜。吟。領収書切っていいか?」

 白谷吟は困ったように笑い、そして真面目な顔で言った。

「実地調査だったら、いいんじゃないの?」
「ここ、コース料理しかやってないだろ。随分と高い実地調査だな」

 シロ先輩がゲラゲラ笑う。
 つられて私と萌乃も吹き出した。
 白谷吟も、私たちの反応を見て楽しそうに笑う。
 先輩たちのおかげで、すっかりいつもの自分に戻った気がする。

(このチームは最高だ。特に……)

 白谷吟と談笑しているシロ先輩の背中を、こっそりと眺めながらそう思った。