クロとシロと、時々ギン

 コンビとしての相性が悪ければ仕事は捗らない。
 萌乃の暗い表情から、私はそんな不安を感じ取った。
 しかし萌乃は曖昧な表情で首を振る。

「いえ、そういうわけじゃないんです」
「そうなの? でも、何かあったから白谷先輩のこと気にしてるんじゃないの?」
「本当に何かあったわけじゃないんです。白谷さんは優しいですし、いつも丁寧に仕事を教えてくださいます」
「そういう人だよねー。周りに気を遣ってるところとか、笑顔で仕事してるところとか、社会人として見習いたいなって思う人だよ」
「やっぱり、明日花さんもそう思います?」

 萌乃がずいっと身を乗り出してくる。どうやら白谷が苦手なわけではないらしい。

「う、うん」

 不可解な反応に少し焦りつつ相槌を打つと、萌乃はまた暗い顔になった。

「えっ? ちょっと、どうしたのよ? さっきから」
「……私には、無理なんです」

 萌乃は俯き、悔しさが滲んだ声を出す。

「私は、白谷さんみたいに出来ません。せっかく教えていただいているのに……」

 なるほど。どうやら仕事の壁にぶつかっているらしい。しかも比較対象が、“社内イチの爽やかイケメン”と名高い白谷吟。いや、ただのイケメンではない。頭の回転が速く、仕事は早くて丁寧。社内外から一目置かれる存在なのだ。
 そんなパーフェクトヒューマンと自分を比べるなんて。萌乃は、意外と意識高い系なのかもしれない。
 彼を目指すのは無理だと思いつつ、落ち込む萌乃に声をかけた。

「萌ちゃんはさ、まだ配属されたばかりで知らないかもしれないけど、白谷先輩って、うちの会社のエースって言われてる人なんだよ。そんなすごい人と同じようには出来なくて当然だよ。まだ仕事始めたばかりなんだから」
「それは、そうなんですけど……。でも、教えてもらってるのに、全然出来ないのが申し訳なくて」
「申し訳ない? それって、誰に対して?」