カタカタとノートパソコンのタイピング音が、静まり返った小会議室の空気を揺らしていた。
仕事に集中したいとき、私は自分のデスクではなく、こうして個室に籠る。無音の空間は短期集中に向いている。
プレゼン資料をひと通り作り終え、キーボードから手を離す。指を絡めてぐっと伸びをすると、根を詰めた体が軽く悲鳴を上げた。
座ったまま上半身を軽くストレッチしていると、コンコンとノック音が響いた。返事を待たずに女子社員が入ってくる。
「明日花さん。コーヒーどうですか?」
「ありがとう、萌ちゃん。一段落ついたから、いただこうかな」
後輩の萩田萌乃に笑みを向ける。
紙カップを手渡しながら、萌乃が私のパソコン画面を覗き込む。
「資料、もう出来たんですか?」
「うん。大体ね」
「すごいですね、明日花さんって。私、資料作りって苦手で。私がやってたら明日になっても終わらないかもです」
自虐っぽく言うわりに涼しい顔でコーヒーを飲んでいるあたり、本気ではないのだろう。
でも指摘するほど親しいわけでもないし、私自身、後輩育成に熱心なタイプでもない。
「こんなの大したことないよ。慣れもあるし。もしアレなら白谷先輩に教えてもらったら? 萌ちゃん、白谷先輩と組んでるんだし」
アレとは何だ、と心の中で自分にツッコミを入れつつも、自分で教えるつもりはない。
そんな私の適当な返しは、思いの外、萌乃の表情を暗くした。
「明日花さんって、白谷さんと仲良いんですか?」
「え? う〜ん、どうかな。悪くはないと思うよ。どうして?」
「いえ。よくお話されているので」
「ああ。私と組んでるシロ先輩が白谷先輩と幼馴染なんだって。仲良いのはあの二人で、私はおまけみたいなもんだよ」
軽く流してみたが、萌乃の表情はさらに曇る。
「どうしたの? もしかして、白谷先輩と上手くいってない?」
萌乃は3か月の研修を終えたばかりの新入社員だ。
配属先の二課で白谷吟が教育係をしている。独り立ちするまでは二人で動くことになるのだが、白谷吟との間で何かあったのだろうか?
仕事に集中したいとき、私は自分のデスクではなく、こうして個室に籠る。無音の空間は短期集中に向いている。
プレゼン資料をひと通り作り終え、キーボードから手を離す。指を絡めてぐっと伸びをすると、根を詰めた体が軽く悲鳴を上げた。
座ったまま上半身を軽くストレッチしていると、コンコンとノック音が響いた。返事を待たずに女子社員が入ってくる。
「明日花さん。コーヒーどうですか?」
「ありがとう、萌ちゃん。一段落ついたから、いただこうかな」
後輩の萩田萌乃に笑みを向ける。
紙カップを手渡しながら、萌乃が私のパソコン画面を覗き込む。
「資料、もう出来たんですか?」
「うん。大体ね」
「すごいですね、明日花さんって。私、資料作りって苦手で。私がやってたら明日になっても終わらないかもです」
自虐っぽく言うわりに涼しい顔でコーヒーを飲んでいるあたり、本気ではないのだろう。
でも指摘するほど親しいわけでもないし、私自身、後輩育成に熱心なタイプでもない。
「こんなの大したことないよ。慣れもあるし。もしアレなら白谷先輩に教えてもらったら? 萌ちゃん、白谷先輩と組んでるんだし」
アレとは何だ、と心の中で自分にツッコミを入れつつも、自分で教えるつもりはない。
そんな私の適当な返しは、思いの外、萌乃の表情を暗くした。
「明日花さんって、白谷さんと仲良いんですか?」
「え? う〜ん、どうかな。悪くはないと思うよ。どうして?」
「いえ。よくお話されているので」
「ああ。私と組んでるシロ先輩が白谷先輩と幼馴染なんだって。仲良いのはあの二人で、私はおまけみたいなもんだよ」
軽く流してみたが、萌乃の表情はさらに曇る。
「どうしたの? もしかして、白谷先輩と上手くいってない?」
萌乃は3か月の研修を終えたばかりの新入社員だ。
配属先の二課で白谷吟が教育係をしている。独り立ちするまでは二人で動くことになるのだが、白谷吟との間で何かあったのだろうか?
