クロとシロと、時々ギン

 もう私は彼女に対して好意的な感情を持っていない。
 何かあったわけではないけれど、心に距離ができてしまった。会うことを面倒だとさえ思っている。
 そんな私が送る祝福の言葉に、いったい何の価値があるのか。

 どうして私はこんなにも人に対して冷めているのだろう。

 理沙に限らず、学生時代を共に過ごした友人のことも、今ではどうでもいい。
 もともと交友関係は狭い。
 それなのに数少ない旧友との関係が途切れても、寂しさすら感じない。

 薄情なのだと思う。でも、どうしても心が動かない。

 シロ先輩は、彼女たちは私にとって必要のなくなった縁だと言った。ストレスになるなら繋がる意味はない、と。

 けれど、本当にそうなのだろうか。
 私は離れる素振りを見せて、彼女たちに、周りの人たちに甘えているだけなのではないか。
 離れそうになる私を誰かが引き留めてくれるのではないかと期待している、ただ構ってほしい子供なのではないか。

 そんなことをずっと考えていた。

「クロ? おい、聞いてるか?」

 不意にシロ先輩の声が耳に届き、ハッとする。
 いつの間にか電話を終えていたシロ先輩が心配そうな顔でこちらを見ていた。
 思考の海に沈んでいた私は慌てて謝る。

「ごめんなさい。ちょっとぼーっとしてました」
「大丈夫か?」

 笑って誤魔化す。

「疲れてるんじゃないのか?」
「いえ、大丈夫です」
「お前、最近ちゃんと寝てないだろ?」
「え? そんなことないです。昨日だって……」
「嘘つけ」

 シロ先輩が呆れた声を出す。

「……なんで分かるんですか?」
「見てればわかる」

 シロ先輩はじっと私を見つめたまま続ける。

「クロは、自分で思ってるほどポーカーフェイス上手くないぞ」
「う〜ん。そうでしょうか?」
「ああ。特に最近は分かりやすい。何があった?」

 苦笑が漏れる。
 付き合いが長くなってきたせいか、シロ先輩は私の変化によく気づく。
 観念して話すことにした。私は最近の悩みを打ち明ける。
 シロ先輩は時々相槌を打ちながら静かに聞いていた。話し終えると、少し考えるような仕草をする。

「俺が余計なこと言ったかな」

 その言葉に、私は驚いた。