クロとシロと、時々ギン

「お酒飲む人! そう、それ! 別に私、あんまり外見にこだわりないし、年収とか勤め先とかも、普通に生活できるレベルならそれでいいんだよね。相手に求める条件がなさすぎて、結婚相談所のプロフィール書く時困ったのよ。無難に“優しい人”とかを条件にしてたけど」

 由香里はそう答えると、満足そうな顔をして蓮華を口に運んだ。
 そんな彼女の様子に私は呆れつつも、一応納得もしていた。

「なにその緩い感じ……。でも、まぁ、そうだよね。お酒飲む人は外すよね」

 納得顔でうんうんと頷いていると、由香里が首を傾げた。

「え? なんで?」

 由香里の反応に、今度は私が驚く。

「だって、結婚するんでしょう? 酒癖悪い人は嫌じゃん」
「ああ、そっち。もちろん酒癖が悪いのは嫌だよ。でも、お酒を飲んで楽しい人なら全然いい。私も結構飲むからさ。一緒に晩酌できるなら、むしろ好都合っていうか。だから、『お酒を飲む人』が私が唯一相手に求める条件かも」

 確かに由香里はお酒が好きだ。これまでに数回一緒に飲みに行ったことがあるが、その時もかなりのペースでグラスを空けていた。
 それを思うと、一緒にお酒を楽しめる相手というのは彼女にとって魅力的なのかもしれない。

「じゃあ、寺田の絶対条件は趣味の合う人ってことか」

 私がそう言うと、由香里は驚いたような顔をした。

「趣味? そっか趣味か。そういう言い方があるんだ! うんうん。そう。趣味が合う人がいい」

 嬉しそうに笑う由香里。
 私はそんな彼女を見て小さく微笑み、残りの麻婆豆腐をかき込んだ。話に夢中で麻婆豆腐はすっかり冷めていた。少し味が落ちた気もするが、それでもお腹はいっぱいになった。
 私はふぅっと息を吐き、ジャスミン茶を一口飲んで口の中をさっぱりさせる。ふと由香里の視線に気づく。
 彼女は何かを言いたげに私を見ていた。私は首を傾げる。
 すると、由香里はゆっくりと口を開いた。

「ねぇ、矢城は?」

 由香里は真っ直ぐに私を見ている。
 私はその視線に戸惑った。彼女の質問の意味が分からないわけではない。
 視線から逃げるように、自分の手元へ目を落とす。そこにはまだ半分以上残っているジャスミン茶があった。私はそれをじっと見つめる。

 なんだか今日はずっとこんな話をしている気がする。