クロとシロと、時々ギン

 由香里の話によると、登録している会員同士を引き合わせるために、結婚相談所では定期的に婚活パーティーが開催されるのだそうだ。

「でも、なかなかいい出会いなくてさ。こんなこと言うとあれだけど、今日もハズレだったんだ」

 彼女が何気なく話すその内容を、私は驚きの顔で聞いていた。
 結婚相談所以外にも婚活サイトやアプリなど、今の時代は様々な方法で異性との出会いの場が広がっている。
 だが、まさか身近にそれを活用している人がいるとは思っていなかった。

 私だって興味がないわけではない。
 けれど、そこまで積極的に動こうという気持ちになれないのは、きっと「面倒くさい」という思いがあるからだ。
 それに今は恋愛よりも仕事を優先したい。結婚は「したい」と思った時に考えればいいと思っていた。

 由香里は、先月結婚相談所に入会したばかりらしい。入会して半年以内なら退会手続きをすればお金はかからないという。

 由香里が、はぁーと大きなため息を吐いた。
 私は彼女の様子をうかがいながら、そろりと口を開く。

「ねぇ。寺田ってそんなに結婚願望があったの? 今まで全然そんな感じしなかったから意外だわ」

 正直、彼女の口から「婚活」という言葉が出たことに驚いた。これまで由香里からそういった話を聞いたことがなかったからだ。
 私の問いかけに、由香里は力なく笑った。

「まあね。このまま一人で一生を終えるのかなって考えたら、やっぱり寂しくてさ」
「ふぅん……でも、やっぱりちょっと意外かも……」

 私は曖昧に相槌を打つ。
 私たちはまだ二十五歳。この先の人生なんて想像できない。人生の行く末を考えるのは、気が早すぎるような気もする。

「それで、今回行ったのが、大手の結婚相談所合同開催のパーティーだったの」
「へぇ。そうなの」

 私は運ばれてきたジャスミン茶を一口飲み、湯気を立てる麻婆豆腐を口に運ぶ。ピリリとした痺れが舌先に広がる。辛いけれど、美味しい。

「入会したばかりの頃は一対一で会ってたんだけどさ……。なんか違うなって。一人ずつ会うの面倒だなと思って、一度にたくさんの人に出会える婚活パーティーに参加することにしたの」

 由香里は注文した餡掛け蟹チャーハンに蓮華を入れる。それと同時に盛大なため息をついた。

「でも結局、みんな同じに見えちゃって……。自分の話する人ばっかりだし」