クロとシロと、時々ギン

 待ち合わせ場所は、ショッピングモールがいくつも点在する繁華街。その中でもひときわ大きなモールにある中華店だった。土曜日ということもあり、モール内は大勢の人で賑わっている。その人混みを縫うようにして目的の店へ辿り着いた私は、由香里を探した。

 彼女はすぐに見つかった。席にすでに着いていた彼女は、私の姿を見つけるなり大きく手を振った。
 由香里は薄紅色のワンピースをまとっていた。袖口から覗く手には淡いピンクベージュのネイル。艶のある髪には白いレースのリボンが飾られている。普段とは違う装いだが、とてもよく似合っていた。
 私はそんな彼女を見て「可愛い」と思った。それと同時に、自分の格好を見下ろす。
 グレーのパーカーに同色のロングマキシスカート。化粧もナチュラルメイクで済ませている。
 オシャレのかけらもない、いつも通りの自分。休日なんてそんなものだと思うのだが、ラフすぎる格好に急に恥ずかしくなった。

 由香里の向かいに座る。
 彼女がランチセットのページを開いて見せてきたので、挨拶もそこそこに注文をした。私が選んだのは麻婆豆腐定食。辛さ控えめにしてもらった。飲み物はジャスミン茶を頼む。
 注文を取り終えた店員が去ると、ようやく私たちは顔を見合わせた。

「ごめん。勝手にお店決めちゃって。こんな格好だからさ、入れそうな店、限られちゃって」

 軽く腕を広げ、開口一番申し訳なさそうに言う由香里。
 私は彼女の言葉を聞きながら改めて観察した。服装や髪型が違うだけで、こんなにも印象が変わるのだなと思う。普段はパンツスーツに髪をきっちりまとめた姿しか見たことがなかった。
 私は首を横に振る。

「それは構わないけど、どうしたの? その格好。随分と気合が入ってるようだけど」

 素直に思ったことを口にすると、彼女は少し照れたように笑って言った。

「婚活パーティーだったの」

 一瞬、彼女が何を言ったのか分からなかった。私は思わず聞き返す。

「婚活パーティー?」

 由香里は「うん」と短く返事をし、少し俯き加減に続けた。

「私、結婚相談所に登録してるんだけどね……」