クロとシロと、時々ギン

 結婚か。

 高校を卒業してから、理沙とはほとんど会う機会がなかった。このまま自然と繋がりが切れるのだろうと思っていた。

 理沙のことは懐かしいとは思ったが、それ以上の気持ちは湧かない。むしろ、面倒なものが届いたなとすら感じてしまう。
 正直、気が重い。
 ふと窓の外に目をやると、どんよりとした雪雲が空を覆っていた。まるで今の自分の心の中みたいだと思いながら、再び手の中の封書を見る。

「……どうしようかな」

 ぽつりと呟く。本当にどうしたらいいのか分からない。
 とりあえず返事は保留にしておこう。招待状を鞄に押し込んだ。
 鬱々とした気分でマグカップに口をつける。すっかり冷めたお茶が喉をスッと冷やす。その冷たさにキュッと体を縮めた、その時だった。

 スマホが鳴った。画面を見ると、短いメッセージが表示されていた。

“突然だけど、今日、ランチでもどう?”

 送り主は寺田由香里。会社の同期の中で一番親しくしている子だ。
 経理課に所属する彼女とは部署が違うため、なかなか会う機会はない。だが、時折ふと思い出したように連絡をくれる。
 明るくてサバサバしていて、女子特有の気を遣った付き合いをしなくていい。
 その距離感が私にはちょうど良かった。

 私はすぐに返信する。

“いいよ。ちょうど暇してたところ。でも今、実家なの。ちょっと遅めのランチでもいい?”

 送信するとすぐに既読になり、その後「OK!」と可愛いキャラクターのスタンプが送られてきた。その様子に思わず笑みがこぼれる。
 マグカップの中身を飲み干し、荷物を手にした。

「あら? もう帰るの?」

 私の動きに気づいた母がキッチンから出てきた。
 私は立ち止まらずに答える。

「うん。友達と約束があるから」
「そう……。あ、これ持っていって」

 差し出された小さな紙袋を受け取ると、微かに甘い香りが鼻腔をくすぐる。

「何?」

 尋ねると、母は微笑んで答えた。