クロとシロと、時々ギン

「矢城さんとは食堂で一緒にお昼を食べていたんだ」
「昼?」
「そう。さっきメールしたろ。サンドイッチを買ったから、食べられそうなら持って行くって」
「あ、ああ。サンドイッチな……」

 その会話を聞いて、私は思わずつぶやいた。

「あ、さっきのメールって」
「うん。史郎に」

 白谷吟がニコニコと笑う。
 私は心底感心した。てっきり仕事のメールだと思っていたのだが、まさかシロ先輩へ連絡していたとは。

「そうだったんですね。白谷先輩は優しいですね」

 私がそう言うと、白谷吟はなぜか苦笑した。

「史郎の世話を焼くのは、習慣みたいなもんだから」

 そう言って肩をすくめる白谷吟を見て、本当に二人は仲が良いのだなと思った。

 その後、白谷吟はシロ先輩にサンドイッチを押し付けると、自分の部署へ戻っていった。
 残されたのは私とシロ先輩だけ。
 シロ先輩は何か言いたげな様子だったが、結局何も言わずに歩き出した。慌てて後を追う。
 オフィスに戻ると、シロ先輩は静かに自分のデスクに着いた。パソコンの画面に向かう横顔は、やはり顔色が良くなっている気がする。
 しかし、良かったと思うと同時に、仏頂面が気になった。

「先輩。なんでさっきから不機嫌なんですか? せっかく白谷先輩がサンドイッチを届けてくれたのに」

 シロ先輩はちらりとこちらを見る。それから、ぶすっとした顔のままサンドイッチを開封し、食べ始めた。

「別に不機嫌じゃない」

 ボソリと言うシロ先輩に、思わずツッコむ。

「いや、でも、いつもより眉間にシワ寄ってますけど」
「……そんなことない。気のせいだ」

 シロ先輩はサンドイッチを咥えたままキーボードを叩き始めた。
 こうして、午後の仕事が始まった。
 相変わらず隣から放たれるイライラオーラのせいで、仕事に集中できない。先ほどから、シロ先輩がチラチラと私を見ているのを感じる。
 もしかして、私に苛立っているのだろうか。そうだとすればなぜだろう。正直、苛立たせるようなことをした覚えはない。
 そう思ってシロ先輩の方を見ると、目が合った。すると、シロ先輩が小さく舌打ちをした。

(……だから! どうして私を睨むんですか!?)

 分からない。全く理由が思いつかない。
 私は意を決して、隣の席の人を見据えた。