クロとシロと、時々ギン

 だけど、シロ先輩は先のことを考えてくれていたのだ。
 それがわかって嬉しくなった。思わず頬が緩む。

「シロ先輩は、そんなに私のことが好きだったんですね」

 からかうような口調で言う私に、シロ先輩は苦い顔を見せる。

「うるせぇよ」

 背けた顔が、耳まで真っ赤に染まっている。
 嬉しい気持ちでいっぱいだ。でも、それを素直に伝えるには恥ずかしかった。
 だから、私は冗談交じりに言葉を紡ぐ。

「シロ先輩に結婚願望があるなんて知りませんでした」
「別にねぇよ。ただお前とずっと一緒にいたいと思っただけ」

 シロ先輩の言葉に、今度は私が耳まで真っ赤に染まる。
 シロ先輩はいつもそうだ。言葉足らずで、不器用で、ぶっきらぼうで、口が悪い。
 だけど、その裏には優しさがある。真っ直ぐな想いがある。
 だから、彼の発した言葉たちは、いつだって私の心に響く。

「本当はもう少し先、クロの気持ちがそっちへ向いてから言おうと思ってたんだ。だけど……あんなの見たら……我慢できなかったんだよ!」

 バツが悪そうに鼻の頭を掻きながらそう言うシロ先輩の言葉の意味が分からず、私は疑問符を浮かべる。
 その反応の鈍さに痺れを切らしたのか、シロ先輩の声が少し大きくなる。

「お前の隣に立つのは、俺以外有り得ねぇ。模擬挙式だろうが、相手役が吟だろうが、他の男にお前の隣は譲りたくないと思った」

 シロ先輩の真剣な眼差しが、私の心を射抜く。
 ああ、そういうことだったのか。
 挙式の時に見たシロ先輩の顔が蘇ってくる。あの時のポカンとした間抜け面を思い出して、私は堪えきれずに声を出して笑う。
 あれは、花嫁姿の私に見惚れていたということか。

「シロ先輩。私、今、とっても幸せです」

 シロ先輩は私の言葉を聞くと驚いた様子を見せたが、やがて優しく微笑んでくれた。
 私たちは見つめ合って、もう一度キスをした。
 シロ先輩が私の髪をそっと撫でる。
 心地良さに身を預けながら、私は思う。
 ぶっきらぼうだけど優しくて、時に大胆に気持ちをぶつけてくるこの人を、私はきっと一生愛し続けるのだろう。