クロとシロと、時々ギン

 由香里は、私の顔をじっと見つめていた。その瞳には決意の色がはっきりと見えた。
 私は何も言わずに頷く。
 由香里は満足げに頷き返すと、またいつもの顔に戻って私の背中をバシッと叩いた。

「さーて! 帰って、未来の旦那様を探そうかな」

 帰っていく由香里を見送って一息つくと、背後に人の気配を感じた。
 振り返ると、そこにはシロ先輩が立っていた。目が合うと、シロ先輩はバツが悪そうに微笑む。

「お疲れ」

 その声を聞いた瞬間、安堵と疲労がドッと押し寄せてくる。
 労いの言葉が欲しくて、少し甘えた声を出した。

「もぉ~、先輩。どこに行ってたんですか」
「片付けの手伝いだよ。そんなことよりお前、セリフとちっただろ。ちゃんと練習しとけよ。クライアントに迷惑かけんな」

 そう言われて、私はガクッとうなだれた。
 プロジェクトの責任者としては当然の叱責だ。

「……すみません」

 私はしゅんとして謝るしかなかった。
 そんな私を見て、先輩は責任者の顔からいつものシロ先輩の顔になると、私の頭にポンと手を置いた。
 私は、その手に甘えるようにして目を閉じた。

 しばらくそのままでいたが、不意に私たちを呼ぶ三嶋さんの声が聞こえた。
 ハッとして目を開ける。いつの間にか頭からシロ先輩の手が離れていた。
 少し離れたところでゲストたちに囲まれていた白谷吟も、三嶋さんの接近に気づき、足早にこちらへやって来た。

「いちゃいちゃするのは、二人っきりの時だけにしろよ」

 白谷吟が、シロ先輩の肩に手を置いて揶揄うように言う。
 私は恥ずかしくて真っ赤になる。シロ先輩は白谷吟を睨む。

「っるせ」