クロとシロと、時々ギン

 大きな姿見の前で、私は自分の姿を眺めた。
 鏡の中の私は、純白のウェディングドレスを着ている。
 胸元はレースになっていて、とても可愛らしいデザインだ。裾の方も幾重ものレースで飾られている。
 自分ではあまり選ばないデザインだったが、なかなか悪くない。
 髪は後ろでまとめられ、白い花が挿してある。

 いよいよこの日が来たんだなと思うと、感慨深いものがある。
 昨日は遅くまで準備でバタバタしていたので、ほとんど寝ていない。
 お肌のコンディションが心配だったが、さすがはプロのメイク。鏡の中の自分は、普段より数倍輝いて見えた。

 コンコンというノックの音で、私はハッと我に返る。
 「はい」と返事をすると、ドアが開き、萌乃と本日の責任者である三嶋さんが入ってきた。二人は私を見るなり、「わぁ!」と歓声を上げた。三嶋さんは満面の笑みを浮かべ、私の手を握った。

「明日花さん。すごく綺麗ですよ。今日は成功間違いなしね」

 そう言って、何度も私の手を上下に振る。
 そんな彼女につられて、私もつい笑顔になる。
 一方、萌乃は羨ましそうに私の花嫁姿を見て言う。

「いいなぁ、明日花さん。私もウェディングドレス着たかったです」

 私は苦笑いを浮かべて言う。

「萌ちゃんなら、すぐに着られるわよ」
「そうですかねぇ」

 萌乃は本当に残念そうにしている。そんな萌乃の姿に、私と三嶋さんは同時に吹き出した。
 笑いが収まると、私は先輩の顔になり萌乃に尋ねた。

「向こうの状況はどう?」
「はい。既に準備完了しています。もう、とんでもなくかっこいいですよ」
「そう。じゃあ、私たちも行きましょうか」
「はいっ」

 私たちは控室を出て、チャペルへと向かった。挙式はホテルの敷地内の教会で行われることになっている。
 チャペルの扉の前に立つと、私は深呼吸をした。心臓がバクバクしている。こんなに緊張するのは久しぶりだ。
 隣にいる三嶋さんが、優しく微笑む。

「大丈夫。私がついているから」
「……はい。ありがとうございます」

 三嶋さんが私の背中に手を当てる。その体温を感じながら、私はもう一度深呼吸をする。
 ゆっくりと扉が開いた。