クロとシロと、時々ギン

「お前は、俺がシロヤギだったら嬉しいのか?」

 私はシロ先輩の瞳を見つめ返す。
 不安と期待が入り混じったようなその視線に、胸の奥がきゅっとなる。

「もちろんです。先輩がシロヤギさんなら、私たち、子供の頃に既に出会っていたんですよ! すごくないですか? しかも、シロヤギさんは私の背中を押してくれた大切な人なんです。それがシロ先輩だったら嬉しいに決まってるじゃないですか。昨日、この可能性に気づいてから、私、何も手に付かないくらいドキドキしていました。シロ先輩も、もしかしたらと思ったから、昨日あの場所に来たのでしょ?」

 一気に話す。心臓の鼓動が激しくなっている。
 シロ先輩はしばらく考え込んでいたが、やがて、小さな声で言った。

「……あの神社のことなんてほとんど覚えてなかった。だけど、一歩足を踏み入れた瞬間、そうそうこんな所だったって、懐かしさが込み上げてきた」

 私はじっと彼の目を見た。

「それって、幼い頃の記憶を思い出したってことですよね? じゃあどうして、どうだろうなんて」

 私の言葉に、シロ先輩が苦笑いを浮かべる。

「クロはさ、シロヤギとの思い出をしっかり覚えているみたいに話すけど、それって完璧か? シロヤギとのやりとりを一言一句正確に覚えているのか? 違うだろ?」
「……それはそうですけど」

 シロ先輩は私の目を覗き込んでくる。その目は真剣で、決して話をはぐらかそうとしているようには見えなかった。

「俺が覚えていないって言っているのは、それと同じことだ。なんとなくあの神社に遊びに行っていた記憶はある。けど、どんな風に遊んでいたのか、そこまで明確には記憶してないってこと」
「……そう、ですか」

 私は小さくため息をつく。
 シロ先輩から肯定の言葉が聞きたかったのに、そうならなかったことに落胆している自分がいる。
 でも、よく考えるとそんな簡単に思い出せるなら、もっと前に反応してくれていたはずだ。