クロとシロと、時々ギン

「でも、何かが引っかかってた。俺は想像して知った気になっているのか? だけど、本当は俺の記憶なんじゃないのか? って、ずっとモヤモヤしてた」

 シロ先輩の言葉に、私は目を見張る。

「俺さ、あまり子供の頃の記憶がないんだよ。というか、自分の記憶に自信が持てないっていうか」
「記憶がない? まさか記憶喪失?」

 私の焦ったような言葉に、シロ先輩は小さく首を振った。

「そうじゃない。ただ、小さい頃のことをあまり覚えてないだけ」
「え?」
「でも、誰だってそうだろ? 小さい頃の記憶なんて曖昧なんじゃないか? 俺の場合、周りの奴にあまり興味がなかったからさ。余計に記憶に残ってないのかもしれないけど」

 シロ先輩の話を聞いて、私の口からポロリと言葉がこぼれ落ちる。

「ああ、シロ先輩も小さい頃は人見知りだったんですもんね」

 シロ先輩は、少し驚いた顔をした。

「俺が人見知りだったこと、知ってたのかよ」
「はい。以前、白谷先輩が教えてくれました」
「あー。くそ。吟のやつ。いつもいつも、余計なことばかり」

 シロ先輩は悔しそうな顔をした。私は思わずクスッと笑ってしまう。

「なんで笑うんだよ」

 シロ先輩は不満げな顔をする。

「いえ。ごめんなさい。シロ先輩と白谷先輩は仲が良くていいなと思っただけです」

 シロ先輩は少し考えてから、また話し出した。

「まぁ、そうだな。あいつとはずっと一緒にいるからな。あいつとのことは、さすがに他の奴らよりは色々思い出せる」

 その言葉に私は思わず食いつく。

「その割に、あの言葉のことは覚えてなかったですよね」
「あの言葉?」
「ほら。シロ先輩が好きなマンガの。『無理してもそれは本当の自分じゃない的な』やつです」

 私がそう言うと、シロ先輩は一瞬キョトンとした顔になった。それから「ああ」と呟いた。

「そういえば、シロヤギも好きな言葉だったな」

 突然戻った本題に、私は動揺しながらも尋ねる。

「やっぱり、シロヤギさんはシロ先輩なんじゃないですか?」
「……それは」

 シロ先輩は言い淀んでから、ふっと息を吐いた。
 真っ直ぐに私を見ると、真面目な声で言う。