クロとシロと、時々ギン

 白谷吟が、本当に平気なのかと私の顔を覗き込む。その顔はカッコいいのに、可愛すぎる。イケメン耐性のない私には少々刺激的だ。

「いや、あの、え~、どうかな……。私、元テニス部なので、色黒なのは仕方ないかなぁって。ほら、シロ先輩の方が色白ですし。私たち、矢城(やぎ)八木(やぎ)なので、名前を呼ばれると紛らわしいですし……。色分けされてた方が、皆さんも分かりやすいかなぁ……なんて。あはは」

 自分でも何を言っているのか分からないほど、口だけがペラペラと動いていた。
 そんな素敵すぎる顔で、見つめないでほしい。この爽やかイケメン、自分の攻撃力の高さを分かっているのだろうか。それとも、分かっていて私をもてあそぼうという、いわゆる“あざとい系”なのか。
 爽やかイケメンを前に、くだらない妄想で私の思考はパンク寸前。
 視線をあちこち彷徨わせていると、シロ先輩が戻ってきて、白谷吟に突然食ってかかった。

「おい! 吟! 何、クロのこといじめてるんだ? クロをいじめていいのは、俺だけだぞ!!」

 目の座ったシロ先輩の物言いに、私たちは揃ってポカンとしてしまう。

「何って、ただ話をしていただけだよ」
「そうですよ。白谷先輩は、私のことを心配してくれていただけです。もう、白谷先輩に謝ってください」
「ん。そうか。すまん」

 白谷吟の澄ました言葉と、私の焦りの抗議に、シロ先輩は素直に謝った。

「あはは。本当に、史郎は矢城さんのことが好きなんだね~。ところで、僕の海老フライは、どこ?」
「あ、すまん。向こうで話してたら、忘れた」

 白谷吟は、理不尽な責めにも嫌な顔ひとつせず、ニコニコとシロ先輩をからかう。
 シロ先輩も、自分の失礼な誤解を引きずることなく、何事もなかったかのように私の隣に腰を下ろした。
 ……というか、シロ先輩が私を好き、とはっ!?
 またしても、爽やかイケメンの発言に目をパチクリさせていると、シロ先輩が私の顔を覗き込んできた。

「何だ、クロ。吟のこと、そんなに見て。惚れたのか?」
「ちがっ……!!」

 違うと訂正しようとしたところで、白谷吟と視線がぶつかった。
 惚れたわけではないが、ここで全力で否定するのは、白谷吟に対して失礼かもしれない。
 私は言葉に詰まる。

「あはは。僕が矢城さんと仲良くなったら、史郎、絶対妬いちゃうよ~。僕を取られたって」