クロとシロと、時々ギン

 私は恥ずかしくて何も答えられない。
 白谷吟はそんな私を見て、可笑しそうに笑いながら続けた。

「そうは言っても、僕は直接、史郎の気持ちを聞いたことはないけどね。でも見ていれば分かるよ。史郎が矢城さんのことを好きだっていうのはさ」

 そう言って、白谷吟は優しく目を細めた。
 私は何と言っていいのか分からない。ただ、顔が熱くなっているのだけは分かった。
 白谷吟はそんな私を見て再び笑うと、少し真面目な表情になり、ゆっくりと言った。

「史郎のこと、よろしくね」

 直接話を聞いていないと言う割に、白谷吟は随分と確信を持った言い方をする。
 私が戸惑って小首を傾げていると、白谷吟はさも当たり前のように言った。

「だって、君たち付き合うことになったんでしょ?」

 白谷吟の言葉に、私は耳まで真っ赤になってしまう。
 白谷吟はそんな私を面白そうに見つめてきた。
 それから、少しだけ寂しげな目になって言った。

「これで、僕もお役ごめんか」

 白谷吟の呟きが耳に届く。
 穏やかな声なのに、どこか諦めの感情が混じっているように聞こえた。
 言葉の意味が分からず、続く言葉を待ったが、白谷吟はそれ以上何も言わなかった。

 白谷吟は静かに私を見つめていた。
 私もまた、彼から視線を外せずにじっと見返した。どれくらい時間が経っただろう。先に口を開いたのは白谷吟の方だった。

「話が逸れちゃったね。僕が言いたかったことはさ、君の想い人のシロヤギさんは、史郎の可能性が限りなく高いってことだよ。それに、ほら、あのセリフ!」
「セリフ?」
「無理してもそれは本当の自分じゃないってやつ」

 ああ、と私は頷く。
 それは、私がシロヤギさんに言われた言葉だ。
 そして、白谷吟と私がシロ先輩から貰った言葉。

 確かに、シロ先輩がシロヤギさんなら、あの似通った言葉にも納得がいく。
 私が納得した様子を見せると、白谷吟は満足げに微笑んだ。

 考えれば考えるほど期待が膨らんでいく。
 一人で考えていた昨晩よりも、さらに期待は確信へと変わっていった。
 だけど、期待と確信の隙間に少しの不安が混じる。