クロとシロと、時々ギン

 落ち込む私を励ますように、白谷吟は明るい声で言った。

「確かにそうだよ。でもさ、史郎のお爺さんの家が君の実家の近くであることは確かだろう? 君とシロヤギさんが出会った頃に、史郎があの神社に通っていた可能性はあるじゃないか」
「でも……」

 それでもまだ不安げにする私に向かって、白谷吟は力強く言った。

「それに、僕は君の思い出と似たような話を史郎から聞いたことがあるんだ。子供の頃に聞いただけだから、君の思い出ほどはっきりとは覚えていないけど。でもきっと、君のシロヤギさんは史郎だよ」

 そう言って白谷吟は微笑んだ。
 その言葉に期待を膨らませる一方、冷静になった自分もいた。
 果たしてシロヤギさんはシロ先輩なのか。それとも他の誰かなのか。
 この人はどうしてこんなにも自信ありげに言えるのだろう。

「白谷先輩は、どうしてそんなに断言できるんですか?」

 私の質問を聞くと、彼は少し驚いたような顔をした。

「だって、そうだったら嬉しいでしょ。二人とも」

 白谷吟はそう言って笑みを浮かべる。
 その屈託ない笑顔に思わず見惚れてしまう。
 それから、白谷吟の言葉に疑問を覚えて首を傾げた。

「二人とも?」
「うん。矢城さんと史郎の二人とも」
「そりゃあ、シロ先輩がシロヤギさんだったら私は嬉しいですけど、白谷先輩は、何でシロ先輩も嬉しいと思うんですか?」

 私の問いに、白谷吟は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「矢城さん。まさか、史郎の気持ちを知らないなんて言わないよね?」

 心臓がどきりと高鳴るのを感じた。
 昨日の出来事が思い出され、思わず顔が赤くなる。

 白谷吟は、シロ先輩の気持ちを知っているということか。
 まさか、昨日のことも知っているのではないだろうか。

 私は急に恥ずかしくなり、両手で頬を押さえた。
 白谷吟はそんな私の様子に、愉快そうに笑った。

「矢城さんも、もう史郎の気持ちを知っているようだね」