クロとシロと、時々ギン

 シロ先輩が私をぎゅっと抱きしめる。
 私たちはお互いの存在を確かめ合うように、しばらくそのままでいた。
 やがて、どちらからともなく身体を離す。

 シロ先輩は、いつもより優しい表情で微笑んでいた。
 シロ先輩の手が私の頬に触れる。
 再び距離が近づくことを期待して目を閉じる。

 しかし予想に反して、シロ先輩の指は私の頬をムニッとつまんだだけだった。
 予想外のことにパチッと目を開けると、シロ先輩が悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。

「何を期待してたんだ?」

 私はフグのようにぷっくりと頬を膨らませた。
 シロ先輩はしばらく笑っていたが、そのうちふっと真顔になった。
 どうしたのかと首を傾げていると、シロ先輩は私をじっと見つめながら言った。

「俺の勘違いじゃないんだな?」

 その質問に、私はコクリとうなずく。
 シロ先輩は満足そうに目を細め、そしてまた真剣な顔に戻った。

「いつからだ? その……いつから、その、好き、とか……」

 シロ先輩にしては珍しく歯切れの悪い物言いだった。

 いつから好きかなんて、私にも分からない。
 シロ先輩を意識し始めたきっかけは萌乃の言葉だったけれど、今となってはそれすら曖昧だ。
 もしかしたら、ずっと前から好きだったのかもしれない。
 自分の気持ちを認めるのが怖くて、気づかないふりをしていただけなのかもしれない。
 そんなことを考えているうちに、何と答えるべきか分からなくなってしまった。

 黙り込んだ私を見て、シロ先輩が不安そうに眉を下げる。
 私は慌てて口を開いた。

「いつからかはよく分かりません。でも、この気持ちは多分勘違いなんかじゃありません」
「……多分ってなんだよ」

 私の答えに、シロ先輩は不満そうに口を尖らせた。

「だって、仕方ないじゃないですか。自覚したのは最近なんですから」

 私の開き直ったような答えに、シロ先輩は苦笑いを浮かべた。