社会人になって三年目。
就職したばかりの頃は右も左も分からず、不安と緊張の毎日だった私、矢城明日花も、今では企画営業の仕事に慣れ、やりがいを感じられる日々を送っている。
今日も、コンビを組む“シロ先輩”こと八木史郎と午前中に取引先を回り、ランチを挟んで午後も外回り――の予定だったのだけど。
「ごめんなさいね。せっかく来てもらったのに、急用ができちゃって」
「いえいえ、大丈夫ですよ! またの機会にプレゼンさせてください」
申し訳なさそうなクライアントに、シロ先輩は笑顔で首を横に振った。
取引先を出て駐車場へ向かう途中、その笑顔がスッと消える。
「……チッ」
舌打ちが聞こえた気がして横を見ると、シロ先輩は眉間にしわを寄せていた。
(うわぁ……機嫌悪いなあ)
思わず苦笑いをした私に気づいたのか、シロ先輩はハッとしたように顔を逸らし、「すまん」と小さくつぶやいた。
バツが悪そうに頭を掻く姿に、私もわざと顔をしかめてみせる。
「全然いいですよ。内心、私もチッて思いましたし! だって今日の予定、向こうの都合に合わせて無理やり入れたんですよ!」
わざと声を張って言うと、シロ先輩は困ったような顔をした。
「まぁ……仕方ないけどな。俺たちの仕事は、クライアントの都合に振り回されることが多いから」
「そうなんですけどね。なんかなぁ……。よし! 先輩、気晴らしに甘い物でも食べて帰りましょ?」
私は努めて明るく言った。本当はすごく腹が立っていたけど、怒っても仕方がないことは分かっていた。それに、こんな気分のままじゃ、どうせ仕事にならないと思ったから。
だけど、シロ先輩は私の提案をあっさり却下した。
「いや、急いで会社に戻ろう」
「えっ!? なんでですか!?」
驚く私に、シロ先輩は言う。
「もうすぐ会議の時間だろ。今日は参加できないって言ってきたけど、今ならまだ間に合う。ほら、行くぞ」
「あっ、ちょっと待ってくださいよぉ~!!」
シロ先輩は私の返事も聞かず、スタスタと歩き出した。
(仕事に関しては、案外真面目な人なんだよな)
そう思いながら、私は仕方なくその背中を追いかける。
車に乗り込みエンジンをかけたとき、ふと、あることを思い出した。
就職したばかりの頃は右も左も分からず、不安と緊張の毎日だった私、矢城明日花も、今では企画営業の仕事に慣れ、やりがいを感じられる日々を送っている。
今日も、コンビを組む“シロ先輩”こと八木史郎と午前中に取引先を回り、ランチを挟んで午後も外回り――の予定だったのだけど。
「ごめんなさいね。せっかく来てもらったのに、急用ができちゃって」
「いえいえ、大丈夫ですよ! またの機会にプレゼンさせてください」
申し訳なさそうなクライアントに、シロ先輩は笑顔で首を横に振った。
取引先を出て駐車場へ向かう途中、その笑顔がスッと消える。
「……チッ」
舌打ちが聞こえた気がして横を見ると、シロ先輩は眉間にしわを寄せていた。
(うわぁ……機嫌悪いなあ)
思わず苦笑いをした私に気づいたのか、シロ先輩はハッとしたように顔を逸らし、「すまん」と小さくつぶやいた。
バツが悪そうに頭を掻く姿に、私もわざと顔をしかめてみせる。
「全然いいですよ。内心、私もチッて思いましたし! だって今日の予定、向こうの都合に合わせて無理やり入れたんですよ!」
わざと声を張って言うと、シロ先輩は困ったような顔をした。
「まぁ……仕方ないけどな。俺たちの仕事は、クライアントの都合に振り回されることが多いから」
「そうなんですけどね。なんかなぁ……。よし! 先輩、気晴らしに甘い物でも食べて帰りましょ?」
私は努めて明るく言った。本当はすごく腹が立っていたけど、怒っても仕方がないことは分かっていた。それに、こんな気分のままじゃ、どうせ仕事にならないと思ったから。
だけど、シロ先輩は私の提案をあっさり却下した。
「いや、急いで会社に戻ろう」
「えっ!? なんでですか!?」
驚く私に、シロ先輩は言う。
「もうすぐ会議の時間だろ。今日は参加できないって言ってきたけど、今ならまだ間に合う。ほら、行くぞ」
「あっ、ちょっと待ってくださいよぉ~!!」
シロ先輩は私の返事も聞かず、スタスタと歩き出した。
(仕事に関しては、案外真面目な人なんだよな)
そう思いながら、私は仕方なくその背中を追いかける。
車に乗り込みエンジンをかけたとき、ふと、あることを思い出した。
