彼女の季節を戻したい


「おはよー」

 今日も、先週の途中からのように葵と校門付近で出会った。

「おはよう」

 来るのが早い彼女が、なんでこんなふうに最近遅いのかは、全く分からない。

「よお、葵に冬青も。おはよう」

 そして、今日な何故かヒカルまでやってきた。
 その葵とヒカルは相変わらず夏服なわけで……
 なぜか、僕が冬服にマフラーに手袋というのが変に思えてくるのだった。
 絶対あっちがおかしいけれど。

 だけど……僕の周り、暑がり多すぎじゃない?

 なぜだか少しムカついた。

 その後は、ヒカルが葵に話題を出し、葵が僕に話題を振り、僕が少しだけ答えるという続かなさそうで、何故か続いているサイクルが回っていた。実際は回るじゃなくて川のようにとめどなく話題が流れているだけだ。

「おはよー」

 三人で教室に入ると、「おはよう」という返答は来たものの、奇妙な視線を受けてしまった。

 こもあとも何故か葵はやってきて、ヒカルもやってきて、会話をすることになった。
 疲れそうだったから、武も巻き込むことにした。
 武は寒さを普通に感じる人だから、これで夏服と冬服が半々だ。
 ……いや、これでもやはりおかしい。

 ようやく波があけた授業中。

「なあなあ、ヒカルがとうとう勝負するんだとさ」
「勝負?」
「そう、とうとうな、告白するんだって」

 武は声を小さくしてそう言った。
 告白?

「誰に?」
「お前……気がついていないのか?」
「え、うん、たぶん」
「そんなの葵に決まってんだろ!」

 決まってるんだ。
 うーん、けど今朝のヒカルを見てたら少しは納得できるかも……
 ま、そこら辺はよく分からないから別にいいや。

 それにしても、小さい声でとはいえ、席は三つしか離れていないんだから、聞こえそうなものだけど……大丈夫かな?
 ただ、葵の様子を盗み見るも、特にいつも通りなので、大丈夫だと思っておこう。

「ま、前途多難なのは本人も分かってるだろうな」

 武は不意にそう呟いた。

「なんで?」
「だって……ってこっちもわからないんだよな。うん。気にすんな」
「はぁ……」

 まあいいや。
 僕は授業に集中することにした。


 昼休み。
 さあ、図書室に行こう、と思ったところで、本を家に忘れてきたのを思い出した。
 さらに、柊里に貸した本が、まだ返されていないことに気がついた。
 やばい、あれ、期限超えていないか?
 帰ったら言わなくちゃ。

 となると、本を借りられるわけではないし、さて、どうしようかな、と考えて、教室を見回していると、いつもと違うことに気がついた。

 葵はいつも通り外に出ている。
 だけどそれ以外の人は少ししか外に出ていないみたいだ。
 天気は晴れ。快晴。
 遊び日和なはずなのにどうしたのだろうと思っていると、なにやらヒカルを中心として会議みたいなものが始まった。

「いいか、勝負は火曜日……明日の放課後に行う。最近は冬青と途中まで帰っているみたいだから、それについていけ。たしかお前の家のほうがあのおばちゃんたちの家に冬青より近いだろう?」
「うん」
「だからその間に実行、が一番現実的だ」
「そうだね。それでいいと思う」

 まあ、何というか作戦会議だった。
 けれどおかしいな。
 告白の作戦を会議しているのだろうけど、空気が少し重いような気がする。
 それに……なんだか、ざわざわする。

 図書館はいかないでおこう。

 そんな気分ではなくなってしまって、そんなことを考えた。