彼女の季節を戻したい


「冬青、おはよう」
「おはよう、葵」

 月曜日の朝、学校に行くと、靴箱で葵に会った。
 僕は学校に行くのはそこまで早くない方で、葵はいつも早い。なのにこんな時間にいるなんてどうしたんだろうか?

「珍しく遅いね」
「う、うん。ちょっと用事があったから……」
「そうなんだ」

 そのまま葵と会話しながら、教室に向かう。

「じゃあね」
「うん、また準備が終わったら」

 それぞれの席で別れる。
 それにしても……準備が終わったら? また、喋りに来るのかな?
 何か用事でもあるのだろうか?
 そう思ったけど……

 特段何もなく、ただ普通に喋っただけだった。


「なあ、お前、彼女と何かあったのか?」
「え?」

 授業中のペア活動のとき、隣の席である武にそう聞かれた。

「いや、特に何もないよ。柊里の付き添いで土曜日一緒に行動したけれど……」

 まあ、強いて言うならまた暗い過去を知っちゃったってくらいかな。
 だけどそれなら前にもあったくらいだし、特に変わったことではないと思う。

「またかよ」
「だって柊里が……」

 仕方ないじゃないか。

「はいはい、そういうことにしておくよ。だけど、本当に何もないのか?」
「うん。……なにか気になることでもある?」
「う、まああるっちゃあるけど……」
「何?」
「言わないことにするわ」
「なにそれ、逆に気になるじゃん」

 僕がそう言ったところで話しは終わった。

 武、なにか変だ。
 こんな曖昧にはぐらかすようなこと、少なかったのに。

 ……そういえば、葵も今日は変だよな。
 もしかしたら武はそのことを言いたかったかもしれない。
 だけど……だったら、言わないのはどうしてだろう?
 これくらいのこと、さっさと言えばいいのに。


 昼休みになった。
 相変わらず元気な葵は運動場に遊びに向かっている。
 それに対して僕もいつも通り図書室に向かう。

 あ、そういえばこの前借りた恋愛小説、まだ柊里が持ってたっけ。読み終わったかな。
 後で聞いてみよう。
 そんなことを考え、今日は週明けということもあり2冊読み終わっていたから2冊借りた。


 放課後。

「「「さようならー!」」」

 葵はいつも通りさっさと帰るのだろう、と思いきや、まだ教室に残っている。

「冬青、途中まで一緒に帰らない?」
「いいけど……大丈夫なの?」
「なんで?」
「いっつも早く帰ってたでしょ? 何か用事でもあるんじゃないの?」
「ああ、そういうわけじゃないから大丈夫」
「そうなんだ」

 そういうわけで、途中まで一緒に帰ることになった。

「ふふふっ」

 帰っている途中、急に葵が笑い出した。

「どうかした?」
「ううん、楽しいなって不意に思って」
「どうして?」
「だってこんな安定した生活をさせてもらって、冬青も、柊里ちゃんも、他のクラスメイトもいる。幸せじゃない?」
「かもね……」

 その葵の発言は、重く、輝いているように感じた。