一週間ほどが経って、柊里が会いたがったこともあり、葵と僕と柊里は、土曜日に会うことになった。
「こんにちは〜」
今日は、葵が僕たちの家の方に迎えに来てくれることになっていた。
「柊里、準備はいいか?」
「うん」
「じゃあ行こうか」
そうして、僕たちは家から出発した。
「今日はどこ行くの?」
葵が聞いてきて、柊里が答えた。
「絶景が見れるところ」
「絶景?」
「うん。少し山を登ることになるけど……」
「体力ならあるよ。大丈夫」
「良かった……」
柊里は安心したようだ。
なんと言ったって、今日どこに行くのかを考えたのは柊里だ。
そして、それを聞いて僕も良いと感じた。
だから、今日の僕は正直おまけだ。
「ふふ、ありがとう」
……葵は目ざとい。
きっと柊里が行くところを考えたと気づいたのだろう。
そして感謝も言える。
人として好ましいな、と不意に思った。
「この山を登るんだ」
「この山? 意外と大きいね」
「ゆっくりいったら2時間くらいかかるよ」
僕も、ずっと黙っているのはあれなので、少しだけ口を出す。
「2時間も?」
「うん。……いい?」
「大丈夫だよ」
葵は相変わらず柊里を安心させる言葉を言ってくれる。
助かるなぁ。
「この山はね、みんな『星降り山』って呼んでいるんだ。何でか分かる?」
「えー……。星が降る、でしょ? ……かつて隕石が落ちてきたとか?」
「残念! 実際は夜になると星が降ってくるみたいに感じるほど綺麗に見えるからだよ」
「なるほど……。いいところだね」
「でしょ? 今度は夜の星も見せたいな」
「じゃあ連れいってよ。また今度」
「いいの?」
「もちろん!」
二人は楽しげに話している。
今日の葵はもちろん半袖に膝までのスカート。そして柊里は半袖に薄い上着を軽く羽織っている。
対して僕は、ヒートテックに長袖に上着だ。
僕だけが場違いに感じる服装だった。
……普通に考えたらおかしいのはあの二人なのに。
「もうそろそろだよ」
「おー……」
そして、僕たちは多少の休憩も含みつつ、そろそろ山頂というところまでやってきた。
ただ……少し、葵の様子が変な気がする。
気のせいかも知れないけれど、葵の後ろを歩いている僕からすれば、何だか葵の足取りが重いようにも見えている。
……どうしたんだろう?
だけど、もうすぐでつく。
僕は、首を振って頭から疑問を振り払った。
「この木は山頂手前の目印でね。みんな神木ってよんでいるんだ。ふざけているだけだけど。けれど、無事に山頂にもうすぐ着くという導き。
なんだか不思議でしょ?」
「そうだね……」
やはり、そういう葵の声が、心無しかくらくきこえるのだった。
「着いたー!」
「着いたね……」
「着いたな」
三人でついたことを共有し合う。
「あの岩からの景色が絶景なんだよ。反対側にも岩があってね。だけど私はこっちのほうがおすすめかな」
「そうなんだ。じゃあまずは始めに勧められた方に行こうかな」
「うん」
そして岩に向かい……
突然彼女はしゃがみこんだ。
「ごめん、ここまででいい……?」
そう、弱々しい声で僕に向かって言ったのだった。

