読書日和


【胸懐】(きょうかい)/TAKURO(GLAY)


永遠なんてない。
だからこそ、今この瞬間を大切に生きたい―。

私が人生で最も影響を受けたアーティスト・GLAYのリーダーであるTAKUROさんが、2003年デビュー10周年を前に自身の家族、恋愛、バンド人生について綴ったエッセイ。

発売当時高校3年生だった私にとって、色々考えさせられた大好きな作品です。

17歳でGLAYというバンドを結成し、共に青春時代を過ごし、共に夢を見てやってきた東京で、たくさんの苦しみや挫折を経験してやっと手に入れた成功。

けれどひきかえに失った存在もあって……。

かけがえのないメンバーとの揺るぎない絆を感じると共に、バンドとしての成功の陰に潜む苦しみや葛藤がリアルに書かれていて、ファンとして胸が苦しくなる部分もありました。

でも、読めば読むほど、GLAYというバンドに懸ける想い、音楽に対する情熱、自分の音楽人生と真摯に向き合う姿が感じられて、益々ファンになりました。

ただの芸能人の暴露本ではなく“エッセイ小説”として文章や表現のクオリティも高い作品。
やっぱり詞を書くひとは文章も綺麗だなと思います。

文庫版はGLAYと親交の深いラジオDJ、"やまちゃん"ことやまだひさし氏の熱いあとがきも必読の1冊です。

社会現象となった激動の99年の解散危機や00年のJIROさん脱退危機や05年の事務所独立問題を乗り越え、GLAYは2024年にデビュー30周年を迎えました。

そして本作の発売から20年以上過ぎた2025年、GLAYは30周年のフィナーレのドーム公演で『永遠にGLAYをやりたいです』という言葉を残しました。

永遠を信じていなかったTAKUROさんが『このメンバーなら永遠を信じられる』と思うようになったのかなと考えたら胸が熱くなりました。

TAKUROさんは常々インタビューでも「GLAYをやりたいから4人でいるのではなく、4人でいたいからGLAYをやっている」「俺ほどGLAYを好きな人はいない」と公言しているくらいGLAYやメンバーのことが大好きで、そんなTAKUROさんを最初は茶化していたメンバーも今では「死ぬまでGLAYをやらないか」「GLAYは解散しないバンド」と公言するようになり、気がつけばこんなに自分たちのバンドが大好きなことを公言する仲良しなバンドはいないんじゃないかというくらい愛に溢れたバンドになりました。

メンバー自身が何よりもGLAYを想い、そしてファンファーストを貫きながら活動を続けてくれていることは本当に素晴らしいと思います。

「オワコン」ではなく、「一生解散しないバンド」として唯一無二の存在となりつつある彼らの魅力が、この本を読めばきっとわかります。


【一つ言葉にすれば、一つ何かが変わる〜願いを叶える58の気づき〜】/藤田 麻衣子


シンガーソングライター・藤田麻衣子さんが歌手を目指してからの15年間の活動を綴ったエッセイ。

私が藤田麻衣子さんを知ったきっかけは、2008年に元々ファンだったKOKIAさんのアルバムをネットで購入した時にオススメで表示されて聴いてみたことでした。

当時、川嶋あいちゃんや奥華子さんなどピアノ弾き語りで歌う透明感ある声の癒し系シンガーソングライターにハマっていたこともあり、自分の好みに合うなと思って楽曲をチェックするようになりました。

この時はまだゲームやアニメのタイアップもなく、本当に知る人ぞ知るアーティストという感じでした。

ほとんどメディア出演しない方なのでライブのMCの時くらいしか彼女の人柄に触れる機会がなく、どんな経緯や想いでデビューしたのか知らなかったのですが、飾らない素直な言葉で綴られていて好感が持てました。

女子の複雑な恋愛感情をテーマにした楽曲も多いので、事務所やレコード会社の売り方次第では西野カナちゃん的なポジションでもっと知名度が上がったりヒット曲が出たかもしれないけど、ご本人がそれを望まなかったんでしょうね。

自分が決めたことは絶対譲らない、意志を曲げない頑固さが私に似ているなと共感した部分もたくさんありました。

中でも『あなたは幸せになる』という楽曲のエピソードについて、スタッフに「歌詞を書き直した方がいいと言われたけど直さなかった」という話がありましたが、私はこの曲が大好きで、一時期適応障害になった時に毎日通勤電車の中で聴いて励まされた思い出があるので直さないでくれて本当に良かったと思います。

他にも夢を叶えるためにどうしたらいいのかのヒントになる言葉がたくさんあって、とても励みになりました。

ちなみに書籍タイトルになっている『一つ言葉にすれば、一つ何かが変わる』は、藤田麻衣子さん自身の楽曲タイトルと歌詞です。

前向きな気持ちになれる大好きな楽曲なので、ご興味ある方はぜひ一度聴いてみて下さい。



【空色の椅子】/梶浦 由記

社会現象になった『鬼滅の刃』の主題歌などを手掛けるアニソンクリエイター・梶浦 由記さんのミニエッセイを含んだ初の詩集。

元Kalafina大ファンの私としては絶対買わなきゃ!と即購入しました。

ほとんどメディアに出演されることがないので、梶浦さんがどんな生い立ちで、どんな想いであの美しい言葉たちを紡いでいるのか、同じ言葉を扱う作家を志す者としてとても興味がありました。

梶浦さんについては、アニメを全く観ていない私よりアニソンに詳しい高校時代の親友の方が先に存在を知っていて、お互い会うといつも「梶浦さんは本当に天才だと思う!」と語り合うくらい尊敬しているソングクリエイターです。

あの独特の言葉選びにはやはりオペラや海外文学の要素が詰まっているんだな、と知って納得。

特に2010年代以降のアイドルブームでとにかく「キミが大好き!キュンキュンする!」という恋愛史上主義なある意味幼稚な歌詞ばかりになってしまった日本の音楽界の中で、一線を画して文学的で情緒的な知性溢れる詞を書く方だなと思います。

ここで私が梶浦さん楽曲で歌詞が大好きな曲を紹介します。

 『胸の行方』/Kalafina

全編大好きな歌詞ですが、特に好きな2フレーズがこちら。

♪好きな本の最後の一行に込み上げる愛しさを
 誰に語ることもなく閉じ込めて
 胸はどこへ行くのだろう


子供の頃から読書好きで、まだネットもSNSも普及していなかった中学時代、まさにお気に入りの作家さんの作品を読み終えたあとに感じていたことを見事に言語化してくれたようなフレーズで鳥肌が立ちました。


♪夢ばかりを見ていると言われても
 ただ優しくなりたい
 目の前の人達を慰める言葉だけを見つけたい

ひとりひとりがこのフレーズのような気持ちで日々を過ごせたら、世界はきっともっと優しく平和になるのにな…と世界平和にまで発想が飛ばせるシンプルなのにとても深いフレーズだと思います。


 『アレルヤ』/Kalafina

小さな頃からずっと一緒に暮らしていた大好きな祖母が、5年間に渡る認知症とパーキンソン病の闘病の末亡くなった数ヶ月後にリリースされたこともあり、「命」をテーマにした歌詞の一言一言に泣けた楽曲。特に好きなのが↓のフレーズです。

♪明るい方へ明るい方へ
 きっともがいて何度も泣いて
 僕らは行く 僕らは行く

♪小さな命を振り絞って振り絞って
 振り絞って 君の未来へ アレルヤ

まさに「命の讃歌」と言える楽曲。
歌詞はもちろんのこと、3人の美しいコーラスワークも素晴らしいです。


『Melody 』/千葉 紗子

当初『虹色のMelody』というタイトルで書いていた音楽系作品のクライマックスがなかなか浮かばずにいた時、親友が「Kalafinaと同じ梶浦さんプロデュースの曲ですごく良い曲があるよ」とオススメしてくれたのがこの曲です。歌詞が歌に人生を懸ける主人公の想いそのもので、一気にラストまで書けた思い出があります。特に好きなフレーズがこちら↓

♪せめて好きな歌をひとつ
 誰かに届く深さで歌っていたい

♪遠いあなたへMelody届けたい
 私の声で 私だけのMelody



【最後の言葉】/川嶋あい

人気番組『あいのり』の主題歌になった『明日への扉』が大ヒットしたI WiSHとしても活動していたシンガーソングライター・川嶋あいの半生を綴ったエッセイ。

本当にこんなドラマや小説みたいなことってあるの?と思うくらい壮絶な生い立ちと出来事の連続で、初めて知った時はとても衝撃的でした。

私が彼女を知ったきっかけは、IWiSHでした。

当時『あいのり』は観ていなかったけど、主題歌になった曲は必ずヒットすると言われていて、朝の芸能ニュースで紹介されているのを観て、なんて綺麗な声でピュアで可愛い曲なんだろうと感動しました。

今でもよく聴いている大好きな曲です。

ソロ名義のデビュー曲『天使たちのメロディー』は歌手になる夢を叶えるためにたったひとり福岡から東京に上京して、挫折と絶望を経験した彼女がリアルな思いを綴った歌で、鬼気迫る想いを感じました。 

今思えばこのエッセイに綴られている事実があったからこそ、心に強く響いたのかもしれません。

恵まれた環境の中で当たり前のようにごく普通の女子高生として過ごしていた私にとっては、同い年の女の子なのにこんなにも違うのかと衝撃を受けた曲でした。

ちなみにGLAY以外で初めて自分からチケットを取ってコンサートに行ったアーティストでもあるので、思い入れが強いです。

アンコールの時に亡きお母さんのために歌った『ありがとう…』という曲で、涙で歌えなくなってしまった場面が今でも印象に残っています。



【M 愛すべき人がいて】/小松成美

中学・高校時代、GLAYと同じくらい社会現象と言われるほど人気だったのがあゆでした。私は当時からご本人のキャラが苦手で、正直歌も上手いと思ってはいなかったけど、楽曲は大好きで新曲が出ればレンタルしてよく聴いていました。(当時はまだダウンロードではなくレンタルが主流でした)

当時、GLAY目当てで歌番組を観ているとあゆも必ずと言って良いほど出ていました。

『Deep Love』など初期のケータイ小説はあゆ人気から生まれたのでは?という記事が出たくらい、当時の10代女子はあゆに影響を受けている人が多いと思います。(実際、私もあゆをイメージした歌姫主人公の作品を書きました)

そんなあゆの『M 愛すべき人がいて』が話題になった発売当時は、自ら不倫告白って落ちる所まで落ちてしまったんだな…とかなり残念に思いました。

ネットでの反応も酷評が大半で、私も『でしょうね』と思っていました。
でも、いざ書籍を読んでみて作品に対するイメージが変わりました。

この作品は、初期のケータイ小説のような号泣悲劇恋愛作品でもドロドロの不倫作品でもなく、あゆとあゆの楽曲をモデルにした半フィクション芸能系作品だと捉えれば、私は好きな作品だなと思いました。

ただ、それは私があゆ世代だけどあゆの熱狂的ファンではないからだと思います。

当時から熱狂的ファンで楽曲を完全に自分や自分の人生とリンクさせて聴いていた人にとっては、大好きな曲にまつわる思い出が汚されたように感じて受け入れられないかもしれません。

ケータイ小説っぽい作品が好きな人には良いと思います。