夏の蜃気楼と君の横顔

「邪魔だと思わないか?」
朔の言葉は、真夏の夜の空気を切り裂く刃のようだった。私は息を呑み、彼の真っ直ぐな視線から逃れられなかった。

「な、なんでそんなこと言うの? 蓮は、私の大切な幼馴染だよ」

動揺しながらも、私は蓮を否定する言葉を口にすることはできなかった。
朔は私の反応を見て、少しだけ口角を上げた。それは笑みというより、諦めを含んだ皮肉な表情だった。

「ふうん……大切、ね。ま、いいや。じゃあな、皆川さん」

彼はそれだけ言い残し、背を向けて歩き去っていった。
私は街灯の下に一人取り残され、心臓がバクバクと鳴っているのを感じていた。
「邪魔」という言葉が、頭の中をぐるぐると駆け巡る。
家に着いても、朔の言葉と彼のクールな横顔が脳裏から離れなかった。
蓮との関係は、あまりにも当たり前すぎて、一度も「邪魔」だなんて考えたことはなかった。けれど、朔の言葉は、
私たちの関係が他人から見れば「特殊」であり、あるいは「進展を妨げている」何かであると示唆しているようだった。
「私、蓮のこと……どう思ってるんだろう」
私は自分の胸に手を当ててみたが、答えは出なかった。