放置され令嬢と無口な氷の侯爵&雪だるま。『す』の続きが言えるまで

話し合ってもフィーネの腹は決まっている。相手は大人だ。上手く丸め込まれてしまいそうで、あまり乗り気はしない。

「どこからだ? どこからいけなかった?」
「婚約してから三年間、一度も会いにいらっしゃられなかった所ですかね」
「君が成人するのを待っていた」
「それを伝えることすらされなかった」

フィーネは今度、クローヴィスから目を逸らさない。

「十五歳の娘が十三も年の離れた相手と結婚なんて、夢を見る余地はあるのか?」
「もう覚えていませんが最初はあったかもしれません。三年間、放置されてここに幸せなんて無いと諦めました」
「放置? 手紙は送っていたが?」
「肝心なことは何もお話しできてはいません」

手紙は確かに来ていた。はじめは嬉しかったけれど、どれも表面上の薄い内容だと思うようになっていった。

「君も会いに来てほしいならそう言えば良かったのに」
「それは……」
「十三も上の男に興味がないとは言え、会いに来なかったのは君も同じだろう?」

そう言われてフィーネはあることを思い出して涙が出てきた。
涙を流すフィーネを見て驚くクローヴィス。

「まさか」

そう、フィーネは一度だけ会いに行ったのだ。だが婚約者だと言っても、使用人にすげなく断られた。その使用人はフィーネを嘘つき呼ばわりした。軽くあしらわれた態度、冷たい温度、あの日の出来事は今でも思い出すと心が凍てつく。

「会いに来たのか?」
「……失礼します」

フィーネは頬の涙を拭いながら応接部屋から出た。

自室に籠り、泣くフィーネ。
雪だるまが歩いてくる。

『フィーネごめんね』

雪だるまの高い声だ。

「あなたが謝っても意味ないのよ」

泣き止んだフィーネは雪だるまの鼻を指で軽く弾いた。

『フィーネ許して』
「んー、どうしようかしら」

部屋に籠っているとクローヴィスは帰って行ったようだ。