放置され令嬢と無口な氷の侯爵&雪だるま。『す』の続きが言えるまで

「何が転げても笑える年頃だな」

クローヴィスの一言にフィーネは笑いが止まった。
おじさんくさい発言に年齢的な差を感じる。実際、クローヴィスはフィーネよりも十三歳年上だ。

「……なんだ止まったのか」

お互いに無表情になる。
フィーネは視線を逸らした。再び、静まり返る室内。

(これよ!この調子よ)

雪の精霊の雪だるまが机の上で構ってくれとアピールしはじめた。

(雪の精霊には悪いけど、これも婚約破棄のためなのよ)

雪だるまのアピールは続いている。ひらひらと踊っているようだ。

また調子を狂わされると困る。フィーネは雪だるまを一旦部屋から出すために捕まえようとしたが素早くて逃げられた。構わず追いかけるフィーネ。
追いかけろと言っているのか、部屋の端から端に逃げる雪だるま。

「こら! 待ちなさい!」

フィーネは雪だるまを追いかけるのに夢中になりすぎて、クローヴィスが居ることをうっかり忘れていた。
ソファーの背もたれの上に行った雪だるまに思いっきり飛び込んだ。
そこはクローヴィスが座っている席で、クローヴィスの上に乗っかってしまった。

雪だるまを捕まえたが、恥ずかしい。

(やられたわ、この雪だるま!)

「危ないぞ」

クローヴィスはぎこちない動作でフィーネの体勢を変えさせて膝の上に座らせた。
距離が近い。目と鼻の先にクローヴィスの顔。フィーネは不覚にもどぎまぎしてしまった。
持っている雪だるまをクローヴィスの顔面に押し付けた。

「冷たいな」

その隙にフィーネはクローヴィスから離れた。

(この顔は心臓に良くないわ)

鼓動の音が聞こえてしまうのではないかというくらい鳴った。