放置され令嬢と無口な氷の侯爵&雪だるま。『す』の続きが言えるまで

「すまないが雪だるまを退かせてくれ」
「あら。雪の精霊のすることです。人間にはどうすることもできません」
「……そうか。俺に怒っているのか?」
「そうですねぇ。そんな顔をしています」

雪だるまはどちらかと言うと困った顔をしている。少しずつ大きくなっていく。

「す、すまない、謝るから許して、くれ」

そう言ったが間に合わなかったのか、クローヴィスの顔は机にくっついて雪だるまの下敷きになった。

「侯爵様?!」

さすがにフィーネも心配した。

雪だるまが小さくなった。
雪だるまに怒ることなくクローヴィスは静かに起き上がった。

「大丈夫ですか?」
「……ああ、悪夢を見そうだ」

雪が溶けたのかクローヴィスの髪はびっしょりだ。
フィーネは自然とハンカチを取り出してクローヴィスから滴る水を拭いた。

「雪だるまに押し潰される夢ですか?」
「そうだな。害の無さそうな顔をして近づいてくるのが余計にこわい」
「ふはっ。ごめんなさい。想像したらおかしくて」

氷の侯爵が雪だるまに押し潰されている夢に怯えるなんて、フィーネは笑いが止まらなくなった。

「笑い事じゃない。大雪に呑まれて死ぬ人もいるんだぞ……」
「そうだけど。侯爵様なら魔法でどうにか出来るでしょう?」
「……フィーネ」

クローヴィスは真剣な顔でフィーネの名前を呼んだ。

雪だるまがクローヴィスの頭の上に乗った。
フィーネがまた笑い出す。雪だるまとクローヴィスを見ただけでもうダメだ、ツボに入る。